まめーじぇんと@Tech

技術ネタに関して (Android, GAE, Angular). Twitter: @mame01122

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(下)

今回で最終回、「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」のまとめです。
上、中は下記のリンクです。

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(上) - まめージェント

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(中) - まめージェント

今回は、8章〜10章、そして終章(まとめ)です。
読破するのに合計で10時間くらいかかってるかな・・・。
非常に時間がかかりましたが、このくらいの時間をかけてもいいくらい、内容ギッシリな本でした。
オススメです。

www.amazon.co.jp

  • -

第八章: 戦略策定プロセスのマネジメント

・多くの新事業で一番マネジメントすべきなのは、戦略よりも、戦略策定に用いられるプロセス。

・二種類の戦略
 ー意図的戦略プロセス: 意識的で分析的、市場成長率、市場分野の規模、顧客のニーズ、競合企業の強みと弱み、技術曲線などに関するデータの分析を基とする。必勝戦略が明らかな際に使われるべき戦略。
 ー創発的戦略プロセス: 組織の内部からわき上がって来るもので、従業員が日常的に下す決定の積み重ねであり、未来志向でも戦略的でもない、戦術的な業務上の決定。将来を予見することが難しい場合は、この創発的プロセス主導で戦略を策定することが望ましい。

・意識的戦略を用いて社内の活動を適切に組織化できるのは、次の3つの条件がそろっているとき
 ー1: 戦略は成功のために必要な全ての重要な詳細を網羅し、それに対処している / 戦略の実行責任者は経営陣の意図的戦略の重要な詳細を理解している
 ー2: 組織が集団行動をとるために、経営トップだけでなく、全従業員にとってそれぞれおかれた状況から考えて理にかなったものでなければならない
 ー3: 集団の意図は、外部からの政治的、技術的な力や市場動向尾などの予測しない影響を極力排除しつつ果たされなければならない

・戦略策定プロセスで資源配分が果たす役割
 ーアイデアや実行計画は、意図的 / 創発的のどちらも、資源配分プロセスというフィルタを通る。これは、どれに資源を与えるか / 与えないかを決定するプロセスのこと。
 ーこの資源配分プロセスは複雑で分散しており、組織のあらゆるレベルで常に機能している。また、企業の意図的戦略と連動しているべきもの。
 ー一つ一つの資源配分プロセスが、企業の現実の行動を形作る。そしてこれが再度意図的および創発的プロセスに投入される。
 ー資源配分プロセスは、組織の価値基準であり、中間管理職が取捨選択を行う。
 ー価値基準に大きな影響を与える要因は、2つあり、それぞれコスト構造と規模の「閾値」(大企業であれば大きなうまみを求めるため、閾値が高くなる)
 ー価値基準はその他、下層の従業員の優先事項に影響を与える。どの顧客や製品を優先すべきか、など。

・戦略策定プロセスを事業開発段階に合わせる
 ー過去に成功したすべての新事業の90%以上で、創業者が意図的に追求した戦略が、最終的に企業の成功を導いた戦略と異なっていた。
 ー成功するのは、当初の戦略に欠陥があることが判明した場合に備えて、再試行する資金を残しておくこと。
 ー一度うまくいくと判断できれば、戦略策定の流れを意図的に策定する段階にシフトしなければならない。

・破壊的成長の波が起こったときに、下記の2つの点で失敗する可能性がある
 ー正しい戦略が判明しないうちに、未熟な意図的戦略を強引に実行してしまい、資金を使い切る
 ー意図的な戦略プロセスは、破壊的成長事業をつづけざまに立ち上げる取り組みで障害となることが多い
  ー成功した企業の資源配分プロセスのフィルタは、成功に導いた戦略に連動するようになるため、既存事業を支える計画以外のものをすべてふるい落としてしまう
  ー意図的戦略プロセスが組織に組み込まれてしまうと、次に新事業を立ち上げるときに、創発的プロセスを再び用いることが難しくなる(創発的プロセスの中で、当初の戦略と異なる現象を、創発的戦略のヒントとしてとらえるのではなく、それをふるい落とそうとしてしまう)

・戦略策定プロセスにおける3つの重要なポイント
 ー1: 新成長事業の当初のコスト構造を注意深く管理すること。当初のコスト構造によって、優先順位付けや資源配分の決定を導く価値基準や判断基準が決まってしまうため。
 ー2: 事業計画では、「発見志向計画法」などの手段を通じて、重要な前提について検証するようにし、有効な戦略を生み出すプロセスを加速させる
 ー3: 1つひとつの事業に繰り返し関与し、創発的・意図的戦略策定プロセスのどちらに従うべきかを判断する。
 ー上記のように、新事業のコスト構造が資源配分決定に及ぼす影響力はとても大きいため、初めから理想顧客を魅力的と捉えるようなコスト構造を構築する必要がある。

・新事業が有効な戦略を見いだす間、創発的プロセスは、「未来志向計画法」という徹底手法を用いて試行錯誤を漠然と繰り返した場合よりも、有効な戦略を早く、目的をもって生み出す手助けができる。

・意図的戦略計画プロセスは4つの段階を経ることが多い
 ー第一段階: イノベーターが将来予測を行い、新事業がどのような形で成功するかを想定する
 ー第二段階: これらの仮説をもとに財務予測を立てる
 ー第三段階: この財務予測に基づく提案を上級役員が承認する
 ー第四段階: 新事業をまかされたチームが戦略を実行する

・また、この段階は第二段階から第一段階に戻ることが多い 
 ーイノベーターや中間管理職は、プロジェクトの資金を獲得するため、見栄えのいい数字を示す必要があるため。

・この意図的戦略計画は、持続的改良と意図的戦略の世界ではそこそこ成功するが、破壊的イノベーションという新世界で意思決定を行うために用いられた場合は、このせいで誤った決定がなされることがある。なので、破壊的イノベーションには、発見志向計画法を用いるべき。

・発見志向計画法の4つの段階
 ー第一段階; 目標とする財務成果を打ち出す。新事業に必要な資金を獲得できる数字を示すべきであることを誰でも知っているのであれば、数字の見栄えをよくするために一度立てた仮説を手直しする茶番がなくなる
 ー第二段階: どのような仮定の正しさが証明されれば、この目標が実現されるのか?第一段階で立てた数字が実現すると現実的に期待できるのは、どのような仮説が正しいことが実際に証明された場合か?を明確にする。ここには、いろいろな理論に関連する仮定を含める。ローエンド型破壊や新市場型破壊が可能かどうか?や標的顧客が仕事を片付けるために新製品を使うか?など。
 ー第三段階: 重要な仮説の妥当性を検証するために、学習計画を実行する。この第三/第四段階は意図的戦略と順番が逆になっている。それは、重要な仮定の妥当性、もしくは無効にするような情報を、陣族に、なるだけ費用をかけずに収集しなければならないため。
 ー第四段階: 戦略を実行するために投資を行う

第九章: 良い金があれば、悪い金もある

・企業経営者が新成長事業にどのような「種類」の資金を提供し、事業のマネージャーがどのような種類の資本を受け入れるかは、新成長事業立ち上げの初期段階における重要な選択。
 ーどのようなタイプの資金をどれくらい受け入れるかによって、資金提供者のどのような期待を満足させなければならないかが決まるため。また、この期待が新事業がどのような種類の市場やチャネルを標的とすることができるかに、大きな影響を及ぼす。

事業の生成期に最も適した資金は、「成長は気長に待つが、利益は気短に急かす」タイプの資金
 ー逆に、「成長は気短に急かすが、利益は気長に待つ」タイプの資金が投資されると、イノベーターに「死の行進」を運命付ける。
 ー成長を気長に待つ必要があるのは、これまで述べたように、無消費に対抗するため、破壊的イノベーションが上位市場に移行するまで待つため。
 ー利益を気短に急かす必要があるのは、顧客がその製品に魅力ある価格を喜んで支払うという仮定をできるだけ早く検証する必要が出てくるため。その結果、マネージャーは固定費を削減し、低い単価当たりコストで儲けの出るビジネスモデルを考えるようになる。また、早期に利益を実現していれば、会社の財政状態が悪化しても事業が縮小されることはない。

・不十分な成長から生じるデス・スパイラル
 ーStep 1: 企業が成功する: イノベーティブな製品が生み出されると、経営陣は創発的なプロセスを排除し、この機会を開拓することにすべての投資を集中させる。そのために、中核事業が成功している間は新成長事業を立ち上げることができない。その結果、競合企業よりも早く持続的向上の軌跡を昇るようになる(ハイエンドのビジネスの方がうまみがあるため)。そして、ローエンドのビジネスを失い始めても、ほとんど気づかない。
 ーStep 2: (投資家が将来の予想成長率を株価に織り込むため)企業は成長ギャップに直面する: 予想成長率が達成されても、株価の上昇率は市場平均どまりになる。その結果株価が大幅に下落、それに対して経営陣は中核事業の現実的な潜在成長率よりもずっと高い目標成長率を発表し、さらに大きな成長ギャップを生み出す。結果、経営陣の交代や企業の買収が行われる
 ーStep 3: 大きな成長ギャップに直面した企業では、資源配分プロセスの判断基準が変化する。つまり、急成長することで成長ギャップを埋めることができないプロジェクトは、どんなものでも戦略プロセスの資源配分ゲートを通過できない。この時点で新成長事業を生み出すプロセスから脱線してしまう。この段階で、破壊的イノベーションは「十分に早く大きくなれないから」という理由で計画案が却下される(新成長事業は無消費に対抗する必要があり、創発的戦略プロセスに従う必要があるため)ただ、破壊的事業は必ず急成長することはできないため、新成長事業のマネージャーは規模を統計的に実証できる市場、つまり確立した明白な大市場にイノベーションを押し込む戦略をとるようになる(消費に対抗する状態)
 ーStep 4: 経営陣は一時的に損失を容認する: 明白な巨大市場で消費に対抗するには、顧客により優れた製品を出さなければならないため、金がかかる戦略だということが明らかになる。上層部は長期的な利益のために大規模な損失を出す現実を受け入れるようになる。ただ、多額の費用をかければ、その分、その費用をまかなえる顧客や市場分野が限られるため、新事業の成長にとっては逆効果。結果、ターゲットとなるのが無消費ではなく、最も多くの顧客に到達できる、最も大きなチャネルだけが十分な収益を早くもたらせると考えるようになる。この時点で、成長を気短に急かすが利益は気長に待つ、悪い金になる。
 ーStep 5: 損失が増大し、縮小を促す: 売り上げが目標に遠く及ばない一方、支出は計画通り実行されるため、投資家が予測成長率が達成されないことを尻、株価が大きく下落する。株価対策のため、経営陣は中核事業の校長を維持するために必要な費用以外の支出をすべて凍結する。企業の資源、プロセス、価値基準は中核事業に会わせて調整されているため、これは業績改善の確実な常套手段。これを受けて株価は上昇するが、中核事業の潜在成長率が株価に織り込まれてしまうと、新しい経営陣は成長のために投資を行う必要を認識する。結果、状況はStep3に逆戻りする。これを何度も繰り返した結果、他社に買収されることになる。

・成長投資のジレンマをどう乗り越えるか
 ー成長投資のジレンマとは「企業資金が良い金なのは、堅調に成長を続けている間だけ」ということ。成長を続ける中核事業は、新成長事業を守ってくれる。中核事業は新成長事業が無消費と対抗する間、創発的プロセスに従う猶予を与える。
 ー成長が鈍化した企業が利益ある新成長事業を立ち上げる方法を何とか発見したとしても、新成長事業が成長の遅い企業の中に埋もれているのは評価できない、と言われる。そして新成長事業をスピンオフさせた結果、株主価値が明確になることもあるが、その後、またして低成長事業にとらわれてしまう。
 ー新成長事業への投資資本を無駄にしない唯一の方法は、それが良い金であるうちに使うこと。つまり、本業がまだ十分健全で、成長を気長に待てる状況で投資すること。
 ー株式非公開企業はこのような圧力にさらされないため、新成長事業構築にとって適切であることが多い

・潜在的失速点を知るためには、財務成果ではなくパターン認識を用いる
 ー財務動向は何年も前のプロセス改善や新製品開発新事業創出のために行われた投資の結果にすぎないので、今日の事業の健全性を計る尺度ではない。
 ーそのため、良い金が悪くなる前に投資方針を立ててしまう必要がある。それは下記3つの方針がある

・投資方針を立てるための3つの要素
 ー1: 新成長事業がまだ本業が健全なうちに(=成長を気長に待てるうちに)定期的に立ち上げること
 ー2: 企業が大規模になっても成長事業を立ち上げる決定が、成長を気長に待てる組織部門のなかで下されるよう、事業部門を分割し続ける。
 ー3: 新成長事業の損失は、極力、既存事業の利益で補填しないようにする。利益を気短に急かすこと、中核事業が傾き始めても有望な事業に必要な資金を確保するためには、利益を実現するに限る。

第十章: 新成長の創出における上級役員の役割

・企業が破壊的成長の新しい波を生み出すには、上級役員が次の3つの責務をこなさなくてはならない
 ー1: 短期的な課題で、破壊的事業と主流事業のインタフェースを直接監督し、企業の資源とプロセスのうち、どれを新事業に適用すべきか、すべきではないかを判断、決定する。
 ー2: やや長期的な責任で、利益ある成長事業を繰り返し巧みに立ち上げるための反復可能なプロセスを作り出すこと。
 ー3: 永久に続くもので、状況の変化を察知し、変化の兆候を見分ける方法を教えること

・経営陣間よの理論
 ー現実には、組織の最上層の役員は、様々な意思決定に立ち会うことができない。そのため、持続的イノベーションの状況では、上層部が関心を払わずともうまく機能する意思決定プロセスが成功のかぎとなる。
 ー上級役員が関与する必要があるのは、主流組織のプロセスや価値基準が組織内の重要な決定をするのに適していないとき。具体的には、破壊的イノベーションのとき。
 ー戦略と経営に関する理論をしっかりと学んだ上級役員は、重要な成長産業のマネージャーたちを指導する必要がある。

・経営幹部なら誰にでも破壊的成長を先導できるのか
 ー創業者に導かれた組織が、基本的には単一事業型の企業で、破壊的イノベーションに直面した当時はそれほど多角化していなかった。これは、創業者が破壊的機会の追求を優先して、既存のプロセスを覆す自身があることによる。

・成長事業を連続して立ち上げるための4つの重要な要素
 ー必要になる前に始める: 財務動向ではなく所定の方針に従って作動させる
 ー上級役員による監督: 頂点から指揮する自信と権限をもった、CEOもしくは上級役員がこの取り組みを先導する
 ー専門家チーム「始動者と形成者」全社レベルの小規模なグループを設置し、確実に資金を得て実行されるようにするための、反復可能で信頼できる確実なシステムを開発する
 ー部隊の訓練: 破壊的機会を発見して、権限のある者に報告することを、組織の全員に徹底して習得させる

終章: バトンタッチ (まとめ)

・1: 実績ある競合企業に魅力的に移るような顧客や市場をターゲットとする戦略は、間違っている。競合が狙わない/背を向けるような場所を狙う。非対称的なモチベーションを生み出せれば、競合他社があなたの勝利に手を貸してくれる

・2: すでに優れた製品を使っている顧客を標的にするのは間違っている。無消費に対抗する方法を見つけ出すこと。顧客が何も持たない状態だからこそ、費用をかけずにそこにリーチすることができる

・3: 無消費者がいない場合は、ローエンド型破壊戦略を検討する。これもダメであれば、投資してはならない

・4: 「顧客にせめて・・・してもらえたら」という発想は間違っている。顧客がすでに片付けようとしていることを、一層手軽に、安価にこなすのに役立つ方法を模索する。

・5: 製品計画やマーケティング計画が社内の組織区分に沿って切り取られた市場分野を標的とするのは間違っている。また、標的市場が容易に入手可能なデータ(製品タイプ、価格帯、人口学的分類など)に沿って分類されているのも間違い。顧客が片付けようとしている用事に即した方法で市場を分類する。(ミルクシェークの例。万能型のシェークが2つの仕事をこなしているが、シェークの特性を改良しそれぞれの仕事をうまくこなせるようにすると、強豪相手からシェアを奪える)

・6: 製品改良計画が競争基盤が不変であることを前提としているのであれば、それは間違い。過去に大きな利益をもたらしたタイプの改良がこの先も同じ利益を得ることを仮定しているのであれば、ローエンドに目を向ける。

・7: 破壊的製品やサービスが十分でない状態で、業界標準やそれに付随する外部委託や提携の話をするのは間違い。オープンスタンダードを時期尚早に追求したり、競争基盤が変化しても独自アーキテクチャを非公開にしたりすると、成功はおぼつかない。

・8: 新事業コア・コンピタンスに適合するから成功すると思ったら、下記の3つの質問をする。また、これあらの質問に対する答えから、適切な組織構造と運営主体を選ぶ。
 ー成功するための資源があるか?
 ープロセスなど、これまで培われてきた方法は、新事業を成功させるために必要なことを行うのに役立つか?
 ー社の価値基準は、時間、資金、人材をめぐって競争している他の実行計画よりも、この実行計画を必要なだけ優先させるか?

・9: 8番の3つの質問を新事業のチャンネルを構成する全存在に問う。自分の会社のことだけでなあく、チャネルに属する企業のプロセスや価値基準も影響を持っている。

・10: 新事業のマネージャを選ぶ際は、候補者を描写する属性や、これまで任された責任の大きさではなく、候補者が過去にどのような問題に取り組んできたかに焦点を絞る。そして、それと新事業が直面すると思われる問題と対比する。

・11: 新事業立ち上げ後数年感は、製品、顧客、用途における最良の戦略が見つかったと思わず、有効な戦略を早く見つけられるようにする。また、どんな戦略でもうまくいくという証拠がない限り、実行に待ったをかける。

・12: 利益を気短に急かす。新事業が利益を生むようになるまで時間がかかるのだとしたら、それは破壊的技術を実績ある市場に押し込もうとする計画。破壊的イノベーションの状況で何年も気長に損失を許容すれば、誤った戦略を長期間追求することになる。

・13: 成長を気長に待てるように、会社の成長を持続させる。破壊では、特に無消費に対抗する場合には、離陸するまでの助走路が長い。また、事業が急成長することを証明できない投資をしない、と経営陣に言われたら、それは破壊的技術を既存市場に押し込もうとしているサイン。

  • -

以上、クレイトン・クリステンセン著「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」のまとめでした!

JavaScriptのホイスティングについて調べてみた

JavaScriptにはどうやら、"ホイスティング (hoisting)"なる仕様があるらしいので、今回はそれを勉強した結果をまとめてみようと思います。

ホイスティングとは?

ホイスティングは"hosting"と書くようです。英語で"hoist"は揚げる、持ち上げる、つり上げる、巻き上げるなどの意味があるようです。日常会話じゃ使わない英語だなぁ。。。
JavaScript的に言えば、"JavaScriptは関数内のどこでもvarで変数宣言をすることができるが、それらの変数は、どこで宣言したとしても、常に関数の一番戦闘で宣言されたように動作する"ということのようです。

つまり、

(function(){
	console.log("a: " + a);
	var a = 1;
})();

というコードであれば、

(function(){
    var a;
	console.log("a: " + a);	// Undefined
	a = 1;
})();

ということになり、console.logで使っている時点ではaの変数はundefinedになるということになりますね。
上記くらいシンプルな例だったら分かりやすいですが、これが複雑になってくると、いろいろと不具合も起きそうです。ちょっとググっただけでも、
・「変数は常に関数の先頭で宣言するようにしましょう」
・「ホイスティングは絶対にさせるべきではない」
・「ホイステイングが原因になる不具合を避けるために、coffee-scriptを使いましょう」
という内容がみつかりました。

何か非常に問題児扱いされているホイスティング、何故JavaScriptがこんな仕様になっているか、調べてみました。

何故ホイスティングって仕様が存在するのか?

・http://stackoverflow.com/questions/15005098/why-does-javascript-hoist-variables
 ーホイスティングはJavaScriptのインタプリタの仕様のため。
 ーJavaScriptのコードの解釈(interpretation)は2つの方法がある
  ーStep 1: varあり変数(declared variable)と関数文(Function declaration)を解釈する
  ーStep 2: 解釈した関数式(Function expression)とvarなし変数(undeclared variable)を解釈(process)し、コードを実行する。
 ー上記2つのステップのためにホイスティングは存在する

つまり、スコープが先に決まるものを先に実行解釈し、その後にスコープが実行時の状況に応じて変わるものを解釈、実行するわけですね。まあ、考えてみればそりゃそうですね。

なので、ホイスティングは、

(function(){
	console.log("a: " + a);
	var a = 1;
})();

のconsole.log("a: " + a);のaって何モノ?(=どのScopeのaなの?)を知るために、

(function(){
	var a;
	console.log("a: " + a);
    a = 1;
})();

というように解釈することで、どのaを参照するか?を決めるために使われる言語仕様、ということができるでしょうか。
※この場合は出てきていないですが、同じaという名前の変数が、グローバルにもある可能性がありますからね。

現状、いろいろと記事を読みながら僕が理解したホイスティングです。
もち間違っていればご指摘くださいませ〜。

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(中)

前回の「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめの続き。mame0112.hatenablog.com


今回は、5章から7章をまとめてあります。
※だんだんと章ごとの分量が増えてきて、内容も複雑になってきた。。。

第五章: 事業範囲を適切に定める

・何を内部調達し、何を業者や提携相手から調達するかの決定は、新成長事業を大きく左右する。この決定を導くために用いられるのが、コア・コンピタンス(中核的な能力)の区分。
 ーただ、コアコンピタンスに結びつく業務は社内に残し、それ以外は外部に委託すべき、という考え方。
 ーだが、このコンピタンスは過去の事実をベースにしているので、全く謝った方向に導かれることもある。
 ー5章と6章では、いかに適切に決定するか?を議論する。

・中核業務かそうでないかの分類は、「片付けるべき用事」をベースにした考え方から始まる
 ーただし、これは「製品が十分でない」状況と「十文以上に良い」ときの2つのパターンで異なる。つまり、「製品が十分でない」状況だと統合が、十文以上に良い状況では外部委託、つまり専門化や特化が有利。

・相互依存型アーキテクチャバリューチェーンの中で、相互に依存関係のあるインタフェース)=最適化された独自アーキテクチャ
 ー組織はどちらか一方の構成要素を開発するためには、同じ組織の中で同時に両秘奥の構成要素を開発しなければならない。

・モジュール方式のイターフェース=予測不能な相互依存関係が存在しないので、誰あが部品やサブシステムを作るかは問題ではあい。離れた場所で作業する独立的な作業グループであっても、開発が可能。
 ー柔軟性を最適化するが、厳しい規格が必要なため、エンジニアの設計の自由度をあまり与えない。

・「十分でない」世界には、相互依存アーキテクチャ
 ー企業は出来る限り優れた製品を作ることで競争しなければならないので、独自使用の相互依存アーキテクチャを基に性能を最適化する企業に、大きな競争優位がある。
 ーこの企業は、統合が他企業でなければならない。それは、システムすべての構成要素をコントロールする必要があるため。
 ー未熟な新技術が持続力向上のために使われることが多い。新規参入企業がブレークスルー技術の商品化に成功することがほとんどないのは、新しい技術が既存の技術利用体系と互換性を持たないため。

・上記のような変化が新興すると、顧客が求めるよりもよい性能になる。これをオーバーシューティングという。
 ー顧客は改良製品を喜んで受け入れるものの、それを手に入れるために割増価格を支払うことはない。
 ーこの状態だと、顧客が割増価格を払う対象が変わる。顧客が割増価格を支払うのは、「要求通りのものを、必要なときに、なるだけ手軽に手に入れる」こと。
 ーつまり、カスタマイゼーション、速度、利便性に関するイノベーションに喜んで割増価格を払うようになる(=競争の基盤が変わる)
 ーこうなると、独自アーキテクチャからモジュール型アーキテクチャに進化する。
 ーモジュール型アーキテクチャは個々のサブシステムの性能を高めるために全体を設計し直す必要がないので、新製品を早く市場に出すことができる。
 ーこの変化は、産業構造にも大きな影響を及ぼす。全体を作るのではなく、モジュールの外部委託が可能となり、一種類の構成要素を供給することで利益を得ることができる。

・ただ、顧客のニーズも変化するため、一度モジュール型になっても新しいニーズが発生することにより、再度再統合が発生する(=より効率よく顧客の求める品質の製品を提供できる)こともある(マイクロソフトのOfficeの例)

・性能が十分でないときの戦略
 ーモジュール型製品の価値を構成する1つのサプライヤーとして新成長事業を立ち上げる考え方は魅力的(費用がそれほどかからず、得意な分野にフォーカスできるため)
 ーただ、機能性と信頼性が不十分な状況では、しばしば失敗に終わる(モジュール化は、破壊の初期段階では技術上または競争上可能でないことが多い)
 ーこのやり方で成功するには、本当のモジュール式の中で競争しているか確認する必要がある。それは、下記の3つが満たされ地得る必要がある。

・3つの条件
 ー1: 指定可能性。供給業者と顧客の両者が、「何を指定すべきか」、つまり構成要素のどの属性が製品システムの動作にとって重要で、どれがそうでないかを識別できなければならない
 ー2: 検証可能性。こうした指定が満たされたかどうかを検証するために、これらの属性を評価できなければならない
 ー3: 予測可能性顧客と供給業者のインタフェースをまたがって、十分に理解されていない、または予測不能な相互依存関係があってはならない。

第六章: コモディティ化をいかにして回避するか

コモディティ化を回避する方法はある。
 ーコモディティ化バリューチェーンのどこかで作用しているときは、必ず脱コモディティ化という補完的なプロセスがバリューチェーンの別の場所で作用している。
 ーコモディティ化が差別化を阻むことで企業の収益力を破壊するのに対して、脱コモディティ化は潜在的に莫大な富を創出し獲得するチャンスを生み出す。
 ーこれは、差別化能力がバリューチェーンのなかを絶えず異動することを意味する。性能が「十分でない」地点に位置を定める企業が、利益を手にする。

コモディティ化と脱コモディティ化のプロセス
 ー収益性の高い差別化された独自製品をコモディティに変えてしまうのが、5章で説明したオーバーシューティングとモジュール化のプロセス。
 ー破壊グラフの左端の領域で最も成功する企業は、統合型企業。理由は2つ
  ー1: 製品の相互依存型の独自アーキテクチャにより、差別化が容易
  ー2: 相互依存型のアーキテクチャを持つ製品の設計と製造では、元来変動費に対する固定費の割合が高く、大きなスケールメリットが働く。これが大規模な統合企業にコスト優位性を与える一方、新規参入企業にとっては乗り越えがたい参入障壁となる。
 ーただ、この状態は、「十分でない」状況あってのこそなので、状況が変化すれば(収益性の高い支配的企業が主流顧客の利用能力を追い抜いてしまえば)形成は変わる(顧客は十分にいいと思う製品にさらに高い価格は払わない)
 ーそしてモジュール方式が支配的となり、コモディティ化が始まる。

コモディティ化のプロセスは、下記の6ステップに分かれて起きる 
 ー1: 新しい市場が生まれると、ある企業が十分ではないが顧客のニーズに近い独自製品を開発する。企業は独自アーキテクチャを通じて製品を生み出すため、魅力的な利益を得る
 ー2: 企業は競争相手より優位に立とうとするうちに、やがて市場の定位置の顧客が利用できる機能性と信頼性を追い抜いてしまう
 ー3: その結果、この階層の競争基盤の変化が促される
 ー4: モジュール型アーキテクチャへの進化が促される
 ー5: 産業の非統合化が進む
 ー6: 製品の性能やコスト面で競合企業との差別化を図ることがきわめて困難になる。誰もが同じ部品を入手でき、同じ基準に基づいてそれを組み立てるから。この状況は機能面でのオーバーシューティングが怒る市場の底辺から始まり、容赦なく上方にうつっていく。

・破壊とコモディティ化の現象を結びつけるのは、オーバーシューティング(=十分以上にいい状況)
 ーどの企業もコモディティ化のプロセスから逃れることはできない
 ーただ、そのすぐそばに繁栄の機会がある。将来の魅力ある利益は、バリューチェーンの別の場所、つまり別の段階や階層で生み出されることが多い。これは、コモディティ化のプロセスが脱コモディティ化という補完的なプロセスを引き起こすため。
 ーこれは、バリューチェーンの中の、従来魅力のなかった場所に起こる。

・脱コモディティ化は、モジュール型破壊者が性能を決定する構成部品とサブシステムの性能の向上を求める結果起こる、補完的プロセスである。
 ー具体的には下記のステップで起こる
 ー1: モジュール型製品の組み立て業者が魅力ある利益を得続けるためには、コストの高い独自開発製品の供給業者を市場階層から駆逐した後、出来る限り上位市場に移行して、再びコスト企業と対決する必要がある。
 ー2: 彼らがどれだけ早く上位市場へ異動できるかを決定するメカニズムが、性能決定サブシステム(上記参照)そのため、これらの構成要素は「十分でない」状態になり、破壊グラフの左側にはじき飛ばされる
 ー3: サブシステムの供給業者は、同業者感の競争によって、ますます相互依存的で独自仕様の設計を開発することを余儀なくされる。それは、自分たちのサブシステムを利用した方が、最終消費製品の性能を高めることができるため
 ー4: これらのサブシステムの大手供給企業は、差別化された独自製品を魅力ある利益率で販売できるようになる
 ー5: その結果、脱コモディティ化が起こる。

コア・コンピタンスROA(資産収益率)最大化のデス・スパイラル
 ーコモディティ化の餌食となる企業は、すぐ下の階層のサブシステムまたは隣接するプロセスで、コモディティ化と同時に起こる。
 ーコア・コンピタンスは、多くの経営者が用いる用法においては、危険なまでに後ろ向きな概念である(=コア・コンピタンスでない業務をすべて外部に委託することを繰り返すことで、結果その企業が中抜きになり、破滅を招く)
 ー競争力は、単に得意だと自負する業務を行うことではなく、むしろ顧客が高く評価する業務をお粉うことから生まれる。

コモディティ化とブランド力
 ーブランドに最も価値があるのは、価値連鎖の「まだ十分でない」段階。顧客が製品の性能に不安を持っているとき、周到につくられたブランドがあれば、得体の知れないメーカーの製品を購入する不安を軽減して、顧客が必要とするものに近いイメージを与えることができる。
 ー同じように、複数の業者が供給する同じ等級の製品が、どれも十分以上であることが明らかな場合は、ブランドがプレミアム価格をつける能力が失われる傾向にある。
 ー製品が「十分でない」ときは、製品自体にブランド力があるが、「十分以上」である場合は、その中身にブランドがつく
  ー昔は衣料品の製品自体にブランド力があったが(例えばリーバイス)、労働力の安い国々の衣料品メーカーでも確かな品質の製品を作ることができるようになると、「十分でない」対象が製品の品質から購入の容易さ/手軽さといったチャネルへ異動した(H&Mなど)この状態で、顧客は誰が製品自体を作っているかを気にしない。

第七章: 破壊的成長能力を持つ組織とは

イノベーションの失敗は、技術的欠陥があることや、市場に適応性がなかったこと「以外」に、事業を構築する責任を、その任務を遂行する能力を持つていないことにもよる。
 ー持続的イノベーションでは役立つスキルが、破壊的成長のためには失敗に導くこともある。

・能力とは下記3つに分解できる。
 ー資源
 ープロセス
 ー価値基準

・資源
 ー3つの要素のうち、最も重要な要素。
 ー人材、設備、技術、製品設計、ブランド、情報、資金、供給業者、顧客との関係などが含まれる
 ー新成長事業の構築で最もつまづく原因となるのは、マネージャーの選択
 ーこれは、企業が「正しい資質(ライトスタッフ)」の発想に基づいてマネージャーを選ぶと過ちが起こるから。
 ーこれには、「コミュニケーション能力が高い」「結果重視」「人を扱う能力に炊けている」など。
 ーただ、新成長事業の立ち上げにはこれらの能力ではない、別の能力が必要とされる。
  ー社内の候補者は、これまでの業務効率や品質の改善する方法は湿地得るが、新規事業に関してはしらない
  ー社外の起業家は、動きの速い新組織の構築については知っているが、安定した効率優先の業務環境の中で、資源獲得のために争ったり不適切なプロセスに抵抗したことはない

・新成長事業のための「プロセス」
 ープロセスは相互作用や連携、意思伝達、意思決定などのパターンのこと。
 ー特定の業務に取り組むために定められたり、自然に生まれたりする。
 ーそれ故、それ以外の業務に適用しようとすると効率が悪くなってしまうことが多い。
 ーマネージャは主流事業を効率よく運営するために設計されたプロセスを使うことが多い。それは、中核事業の調子がいときにそれを変えることができないため。
 ー検討すべきプロセスは、物流や開発、製造や顧客サービスなどの分かりやすい部分ではなく、投資判断を支える、側面的援助プロセスや背景プロセスであることが多い。
  ーどのように市場調査を行うか、その分析結果をどのように財務予測に反映させるか、計画や予算をどのように取り決めるか、など。

・新成長事業のための「価値基準」
 ー従業員が仕事の優先順位を決定する際に用いる判断基準のこと。
 ー企業が大規模で複雑になればなるほど、企業の戦略的方向やビジネスモデルと整合のとれた優先順位の決定を自発的にできるように、社員内で共有する必要があるもの
 ー資源とプロセスが、組織にとって「何ができるか」を定義する成功因子であることに対して、価値基準は「制約」を示す
  ー大企業では求められる売り上げの額も高いため、市場規模の小さい事業には興味を示さない、つまり、規模が巨大であることは、新成長事業を生み出す上で無能力の要因となる。

・能力の移動
 ー組織の能力は、設立間もないときはその資源、特に人材に負うところが大きい。
 ー規模がおおきくなってくると、組織の能力はプロセスや価値基準へと移動する。
 ー組織のメンバーが仕事のやり方や意思決定の基準を、意識的に判断してではなく当たり前のこととして受け入れるようになると、プロセスや価値基準が企業文化を形成する。
 ー文化に埋め込まれると、変革がとてつもなく困難になる。

・破壊的な新事業に適した組織
 ー実績のある企業では、持続的技術でも破壊的技術でも成功できるだけの資源(エンジニア、金、技術)を持っているが、プロセスや価値基準が、リーダーを無能力にしてしまう
 ー一方、規模の小さい破壊的企業では、小さな市場を受け入れる価値基準があり、販売単位あたりの利益が小さくても対応できるコスト構造を持っている。また、市場調査や資源配分プロセスがそれほど形式ばっていなくても、直感的にことを進められる。

・新成長事業立ち上げの際のフレームワーク
 ー様々な軸により、4つのパターンがある
 ーA: 経営者が画期的ではあるが持続的な技術進歩に直面している状態。この技術進歩は組織の勝ち基準と適合するが、これまでと違ったタイプの問題を解決するために、集団や個人が新しい方法で相互作用や連携を行う必要がある。また、重量級のプロジェクトチームが必要となる。
 ーB: プロジェクトが会社の価値基準だけでなくプロセスにも適合している状態。既存組織同士が機能的境界を超えて連携することで、新事業を構築することができる
 ーC: 組織の既存のプロセスにも価値基準にも適合しない、破壊的な技術変化。この状態では、自立的な組織の設立が必要。
 ーD: 主流部門と同等の製品やサービスを、間接費がはるかに低いビジネスモデルを通じて販売するプロジェクトを示す。このような新事業は、主流組織の物流管理プロセスを活用できるが、予算管理、経営、損益の責任は分離する必要がある。

・新しい価値基準を作る 
 ー企業が新しい優先順位の判断基準、つまりあたらし勝ち基準を生み出せる唯一の方法は、新しいコスト構造をもった新しい事業部門を設立すること。
 ー組織は、既存のコスト構造と比較してより高い利益率を約束するイノベーションしか優先できなくなるため、自らを破壊することができない。

・資源、プロセス、価値基準を買収する
 ー経営者は能力を社内で開発するより買収した方が競争上、経済的に意義があると考えるが、成果はまちまち。
 ー被買収企業の成功を導いた本当の要因がプロセスや価値基準にあるのであれば、買収側の企業はこの会社を新しい親会社に統合してはならない。
 ー買収の主な根拠が企業の資源にあるのであれば、親会社への統合は意味がある。

まとめ(下)で、7章から10章は下記リンクです!
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(下) - まめージェント

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(上)

コトラーのマーケティング3.0を読んだ前回(
「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」まとめ(前半) - まめージェント
)に続き、今回は、クリステンセンの有名な"イノベーションのジレンマ"の続編、「イノベーションの解」を読んでみました。これも実は4,5年前に買った本で、そこから本棚で眠っていたんですが、これを機会に。

www.amazon.co.jp

めちゃ長い本で、めちゃ内容も重いので、この本は上・中・下の3回に分けてまとめたいと思います(1〜4章をまとめるだけでも結構な時間がかかっており・・・)

内容を見ると”そうだよね”と思える部分も多いのですが、それをここまで体系立ててまとめているのがこの本のすごいところなのかなぁ、と思ったり。もちろん、なるほどー、と思わせてくれる部分もたくさんあります。さすがクリステンセン。この本、社会人なりたての人というより、ある程度経験をして「イノベーションうまくいかないなー」だとか、「新しいアイデアを提案してもことごとく却下だよな・・・」なんて経験をしたことがある人が読んだ方が、ふむふむ、と読める気がしました。

  • -

第一章: 成長という至上命題

・成長という至上命題から逃れられないのは、投資家の「企業の予測成長率を株式の現在価値に織り込む」という厄介な性向のせい
 ーつまり、たとえ中核事業が力強く成長していても、株主の予測より速いペースで成長しない限り、市場平均を上回るリスク調整後リターンを実現できない

・株価を動かすのは、成長の方向性ではなく、企業の収益やキャッシュフローの変化率における、予想外の変化である

・さらに投資家は、新規事業の成長までも織り込んでしまう

・経営者にとって最もで手強い問題は、一度でもこの試みに失敗すればその後成長を再び軌道に載せるのが難しい

・10の投資のうち、2つが完全な失敗におわり、6つが傷を負いながら何とか存続し、会社全体の成功を支えるのは2つ。
 ー事業創造のプロセスは知り得ないという思い込みがあるため、誰もブラックボックスをこじあけて、新規事業が生み出されるプロセスを研究しようとしない。

イノベーションのプロセスでは、中間管理職が重要な役割を果たしている。優れたアイデアとそうでないものを振り分け、上層部から資金を調達するために中間管理職は存在する。

・問題なのは、中間管理職が市場がはっきりしない新製品のコンセプトを後押しすることはないこと。
 ー上層部が承認しそうにないアイデアを推してしまうと、彼らの昇進に影響があるため。
 ーその結果、経営陣の承認を得るために加工されてパッケージされあtアイデアの集合は、底辺にあふれているアイデアの母集団と全く違うものになる。
 ーつまり、企業内でのアイデアの不足ではなく、既存顧客を一層満足させるための計画に作り替えられてしまうことに問題がある。

第二章: 最強の競合企業を打ち負かす方法

イノベーションにはその状況に応じて、2つの全くことなる区分がある
 ー持続的イノベーション: よりよい製品をつくることで競う状況では、ほぼ必ず既存企業が勝つ
 ー破壊的イノベーション: 新規顧客や魅力のない顧客群に安く売れる、シンプルで便利な製品を商品化することが課題である状況では、新規参入者や既存企業をまかす可能性が非常に高い

・破壊的イノベーションには3つの重要な要素がある
 ー1: どの市場にも顧客が利用または吸収できる改良のベースがある。改良エンジンの例。
 ー2: それぞれの市場において、イノベーションを起こす企業が新製品や改良製品の発売を通じて供給する改良のペースは、顧客が受け入れる最良のペースとは全く異なる奇跡をたどる。つまり、技術進歩の速度が、それぞれの市場階層の顧客の利用能力が向上するペースよりも速いことを示す。
 ー3: 持続的イノベーションと破壊的イノベーションの区別。持続的イノベーションは従来製品よりも優れた性能で、要求の厳しいハイエンドの顧客獲得を目指すもの。破壊的イノベーションは現在手に入る製品ほどには優れていない製品やサービスを出すことで、その奇跡を破壊し、定義し直す。

・大手企業には持続的イノベーションを支えるために設計された資源配分プロセスがあるため、構造的に破壊的イノベーションに対応できない。つねに上位市場に向かう一方で、破壊者にとって魅力的な新市場やローエンド市場を防御する意欲はない。これを、「非対称的モチベーション」と呼ぶ

・ある事業にとって破壊的イノベーションとなるアイデアが、別の事業にとっては持続的イノベーションであることがある
 ーその場合は、そのアイデアに投資してはならない。標的とする市場空間のすべての既存企業に対して、破壊的イノベーションとなる機会を定義しなくてはならない(持続的イノベーションでは、既存企業の方が勝つため、そのような企業に勝つ見込みのない喧嘩をふっかけていることになる)

・軌跡を上って収益性の高い市場の階層い続けざまに参入する一方で、収益性の低いローエンド製品を切り捨てて行くことは、利益率を高めて株価を堅調に保つために必要なこと。

・破壊的イノベーションのグラフ
 ー三次元で表現される。
 ー時間と性能が、顧客が製品やサービスお購入し利用する、特定の用途市場を定義する。これをイノベーションのジレンマでは「バリューネットワーク」と呼んだ。
 ーグラフのもう1つの軸は、消費と競争が行われる新しい環境を示している。新しいバリュー・ネットワーク。従来その製品を購入し利用するための金やスキルを持たなかった顧客か、または製品が利用される新しい環境かのどちらか。
 ー新しいバリューネットワークは、新製品が従来品よりシンプルで携帯性に優れ、製品コストが低いために実現する。
 ーこの、第三次元に新しいバリュー・ネットワークを生み出す破壊を、新市場型破壊と呼ぶ。
 ーこれに対して、ローエンド型破壊は、本来のバリュー・ネットワークのローエンドにいる、最も収益性が低い顧客を攻略するもの。

・新市場型破壊
 ー新市場型破壊者の課題は、打倒すべき相手が既存企業ではなく「無消費」である、新しいバリュー・ネットワークを生み出すことになる。
 ー性能が向上するにつれ、最も要求の甘い顧客から初めて、次々と新しいバリュー・ネットワークの中に引きずり込む。
 ーローエンドの顧客を引きずり出し始めると、大手企業は喜ぶ。自分たちの独誕生である上位市場に以降する際、一時的にだが、利ざやの薄い収益源を破壊者に明け渡す代わりに、持続的イノベーションで高い利益をあげるため。

・ローエンド型破壊
 ー実績のある企業から最も魅力の薄い顧客を摘み取ることで成長した、単なる低コストのビジネスモデル。

・アイデアを破壊的戦略として形成するための3つのリトマス試験紙
 ーアイデアに破壊的戦略としての可能性があるかどうかは下記の3つの質問で見極めることができる。
 ー質問の1つ目か2つ目に対する答えがYes(一般的には両方がYes)でなければならない

・質問1つ目: アイデアが新市場破壊の戦略に成りうるかを確認する
 ーこれまで金や道具、スキルがないという理由で、これを全く行わずにいたか、料金を払って高い技能を持つ専門家にやってもらわなければならなかった人が大勢いるか?
 ー顧客はこの製品やサービスを利用するために、不便な場所にあるセンターに行かなければならなかったか?

・質問2つ目: ローエンド型破壊の可能性を検討する
 ー市場のローエンドには、価格が低ければ、性能面で劣る(が十分いい)製品でも喜んで購入する顧客がいるか?
 ーこうしたローエンドの「過保護にされた」顧客を勝ち取るために必要な低価格でも、魅力的な利益を得られるようなビジネスモデルを構築することができるか?

・質問3つ目:
 ーこのイノベーションは、業界の大手企業すべてにとって破壊的か?もし一社もしくは複数の大手プレーヤーにとって持続的イノベーションである可能性があれば、その企業の賞賛が高く、新規参入者が勝つ見込みはほとんどない。

第三章: 顧客が求める製品とは

・既存の市場細分化がうまくいかない理由
 ー製品の種類、価格ライン、人口統計的属性や心理属性などにとって細分化する区分が、製品や顧客の「属性」によって定義されることにある。
 ー属性ベースの区分に基づく理論は、属性と結果の相関関係を明らかにすることはできるが、製品にどのような特徴や昨日を付加し、どのようにポジショニングすれば顧客に買わせることができるかどうかを示すのは、状況ベースの分類化(細分化)手法に基づくマーケティング理論である必要がある。
 ー顧客は、日々用事が発生し、それを製品を「雇う」ことにより解決をしようとする。
 ーつまり、顧客が製品を購入する状況を構成するのは、顧客が片付けなくてはならない用事の機能的・感情的・社会的な側面。(=顧客が片付けようとする用事や、その用事を通じて達成される成果が、状況ベースの市場区分を構成する)
 ーつまり、キーとなるのは、顧客自身ではなく、”顧客のおかれる状況”。
 ーミルクシェークの例(朝の退屈な通勤中の車内でで片手で飲める、腹持ちするドリンクが、夜は子供が飲み終わるのを待つ必要のある、イライラする飲み物に)

・状況ベースの区分を通じて、破壊の足がかりを得る
 ー顧客がどのような用事をなそうとしているかを注意深く観察することによって見抜き、彼らに問いかけることにより、仮説を立てる。

・破壊を持続させるためのイノベーション
 ー刺激的な成長が始まるのは、イノベーションが向上して、既存企業の製品にとってかわるとき。足がかりの獲得は、そのはじまりにすぎない。
 ー新市場型破壊における挑戦は、上位市場に向かう経路を作り出すこと。
 ーメーカーが特定の用事をよりうまくこなせるような特徴や機能に注力すればするほど、また、マーケティングメッセージをその特定の用事に長い間絞れば絞るほど、早く成長することができる。何故なら、競合企業からシェアを奪うだけでなく、同じ用事をするために雇われる、その他の製品やサービスからもシェアを獲得できるから。

・なぜ逆効果を招く方法で市場を細分化するのか
 ー上記のような内容はすでに繰り返し述べられてきており、経営者やマーケティング担当者も理解をしているものの、社内に働く次の4つの力により、正反対の方向へと進んでしまう
  ー1つ目: 的を絞ることへの恐れ
  ー2つ目: 定量分析の要求
  ー3つ目: 多くの小売りチャネルが属性に基づく構造を持っているため
  ー4つ目: 広告の経済学のよって、企業は製品のターゲットを状況ではなく顧客に定めるよう強いられる

・1つ目: 的を絞ることへの恐れ
 ー製品の焦点をはっきり絞ると、それ以外の用事を片付けようとしている顧客にとっての魅力が薄れる。
 ー益よりも害の方が定量化しやすい。

・2つ目: 上層部による機会の定量化の要求
 ーマネージャが担当組織の成果をはかるために、定量的なデータが必要なため。
 ーこの定量的なデータは、顧客がこなすべき用事ではなく市場規模によってまとめられてしまう。結果、用事という観点がなくなり、どの顧客も満足させられない製品を世の中に出すことになる。

・3つ目: チャネルの構造
 ー小売販路や流通経路は、顧客が片付けなくてはならない用事ではなく、製品区分ごとに組織化されていることが多い。そのため、イノベーターは片付ける必要のある用事に、柔軟に製品の的を絞ることができない。
 ーまた、小売や卸売チャネルは、自分たちにとって破壊的な製品、つまり自分たちの収益モデルを伸ばすのに訳に立たない製品は売ろうとしない。

・4つ目: 広告の経済学とブランド戦略
 ーマーケティング担当役員は、製品や顧客の属性によって市場を細分化することが多い。年齢、性別、ライフスタイルや製品の区分などの側面にそって切り取られていれば、コミュニケーション戦略を立てやすくなるため。
 ーミルクシェークを、顧客の状況に応じて異なったメッセージを伝えるのは非効率。
 ー解決策として、ブランド戦略によって顧客の状況にコミュニケートする。顧客はその状況になったら、そのブランドのことを思い出してくれる。
 ーコダックの使い捨てカメラの例。既存のカメラではなく、”ファンセーバー”として、イベントの楽しみを残せない状況と比較したので、製品が対象とする用途が明確になった。

・顧客はやりたくない用事には手を出さない
 ー人が生活の中でやり遂げたいと思うことは、基本的なレベルではそうそう変わらない。
 ーこの不変性がある限り、顧客にそれまで関心のなかった用事を優先することを求めるアイデアは、成功の見込みはほとんどない。顧客は、新製品が手に入るようになったからといって用事の方を変えることは絶対にない。逆に、顧客がすでに片付けようとしていた用事をより効率的に手軽にやり遂げるのに役立つ新製品なら、成功する。
 ーカメラの例。これまでやってこなかった赤目補正やアルバムでの整理をできる製品を発売しても、売れない。
 ーそれよりも、その場できちんととれているか確認するためにデジタルカメラを使い、焼き増しの手間を省くことができる。
 ークラム(ガリ勉)・ドットコムの例。

第四章: 自社製品にとって最高の顧客とは

・「無消費」の理由は大きく2つある
 ーそもそも関心がない場合(1990年代の米国でのPCの例。価格のせいで200ドルPCが流行らないのではなく、そもそも顧客がそのような用事を持っていなかった)
 ー用事を片付けたいが、市販製品が高すぎたり複雑すぎるため、自力で出来ずにいる場合。このタイプの無消費が、成長機会をもたらす。

・新市場型破壊のパターンを構成する4つの要素
 ー破壊的イノベーションにとって理想的な顧客や用途市場を探すためのテンプレートとして使える。
 ー1: 標的顧客はある用事を片付けようとしているが、金やスキルを持たないため、解決策を手にいれられずにいる
 ー2: このような顧客は、破壊的製品を全く持たない常置と比較する。そのため、本来のバリュー・ネットワークの中で、高いスキルを持つ人々に高い価値で販売されている製品ほぼ性能がなくても、喜んで購入する。こうした新市場顧客を喜ばせるための性能ハードルは、かなり低い
 ー3: 破壊を実現する技術のなかには、非常に高度なものもある。だが、破壊者はその技術を利用して、誰でも購入し利用できる、シンプルで便利な製品をつくる。製品が新たな成長を生み出すのは、「誰でも使える」からこそ。金やスキルをそれほど持たない人々でも消費を始める。
 ー4: 破壊的イノベーションは、全く新しいバリュー・ネットワークを生み出す。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場で利用することが多い。

・無消費への対抗が難しい理由
 ー無消費に対抗するのはわかりきったことのようだが、実績のある企業は、”ほぼ必ず”消費に対抗する道を選び、地位を確立した既存企業の既存製品に対抗し、無理矢理破壊的イノベーションを利用する。
 ーそれは、破壊的イノベーションの到来を察知すると、マネージャーがそれを脅威としてとらえ、既存顧客や既存ビジネスを守ろうとするため。

・コミットメントに加えて、柔軟性を手にいれる方法
 ー解決策は2段階に分かれる
 ー第一段階: 資源配分プロセスでは、イノベーションを脅威として位置づけることで、最高幹部からコミットメントを引き出す
 ー第二段階: このプロジェクトを機会としてとらえることができる、自立的な組織に責任を任せる

・新市場の顧客に到達するには、破壊的チャネルが必要なことが多い
 ーイノベーションを推進するときは、自分たちの製品を上位市場に進むための原動力としてとらえてくれるチャネルを探す必要がある。

  • -

5章以降は、下記のページにまとまっています。

5〜7章
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(中) - まめージェント

8〜10章、終章
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(下) - まめージェント

「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」まとめ(後半)

前回(http://mame0112.hatenablog.com/entry/2015/08/23/132835)に続き、「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」のまとめの後半。今回は6章からまとめてあります。

個人的には、最後の方(9章、10章あたり)は「まあ、そうだよね」感があったりしたので、本の前半にコトラーのいいたことが詰まっていたのかなぁ、と思っています。「顧客」というと一般的にはエンドユーザを想定しますが、社員や株主も顧客としてとらえているあたり、新しさがあるのかなと思ったり。

第6章: 株主に対するビジョンのマーケティング

・企業のビジョンは、自社のミッションと価値を自社の未来像に結びつけるこで生まれる。
・持続可能性は、企業が長期的な株主価値を生み出すうえできわめて重要な課題であり、そこには下記2つの定義があり、その2つには相乗効果はなかった。
 ー企業の観点: ビジネスの世界で企業が長期的に存続すること
 ー社会の観点: 環境や社会の健全さが長期的に存続すること

・下記のような2つの変化により、これらに相乗効果があり、持続可能性に向かう動きを強化することになる。
 ー二極化
 ー資源の不足

・二極化について
 ー中間層が消滅しつつある。なので、企業はトップエンドかローエンドをターゲットにしなければならない。
 ートップエンドのユーザは、ハイエンドの消費者が持続可能性に関心を持つようになっているので、マーケターはそこに注意する必要がある。
 ーボトムエンドのユーザはトップエンドよりもはるかに大きい市場が存在し、将来高成長の源になるのはこの市場。ボトムエンドのユーザにはアクセスの問題もあるので、ここをターゲットにする場合はそれを乗り越える手段を提供してあげる必要がある。

・資源の不足について
 ー天然資源がますます希少になっており、結果一部の資源は急騰している。
 ーこれまでは、ホールフーズのようなニッチ市場に対して有機製品を提供してた企業が環境の持続可能性という概念をとりいれていたが、近年はウォールマートのような巨大企業もこの概念を取り入れ始めている。

・これらの変化によってもたらされる持続可能性の概念は、企業にとって好ましいものであり、消費者を引き寄せ、株主価値を高め、優秀な社員を引き寄せる。

・株主へのマーケティングには、社員やチャネル・パートナーへのマーケティングとは違うアプローチが必要。
 ー株主は消費者と異なり、魅力的なブランド・ストーリーにさほど感動しない
 ー企業文化に強い愛着を持っている社員とも違う。
 ー株主は、投資に対するリターンが得られるかどうかが重要。

・株主にマーケティング3.0の理念の重要性を納得させるには、企業は持続可能性の実践が競争優位を築き、それによって株主価値が高まるという明白な事実を示す必要がある。

・株主がパフォーマンスというとき、それは収益性と投資収益性を意味する。なので、経営陣には持続可能性の長期的な利益を、財務的観点から株主に伝える必要がある。それは、下記の3つ。
 ーコスト生産性の向上: 収益性に影響を及ぼす
 ー新しい市場機会が得られることによる売り上げの増大: 収益性と投資収益性の両方に影響を及ぼす
 ー企業のブランド価値の向上: 長期的な投資収益性に影響を及ぼす

・コスト生産性の向上
 ーよいブランドを消費者が口コミで広めてくれることにより、広告費を大きく削減することができる。
 ーコストのかからない共創のおかげで、製品開発コストも低下する。

・新しい市場機会が得られることによる売り上げの増大
 ー優れたミッション、ビジョン、価値を持つ企業は、その他の企業よりも容易に新しい市場に参入できる

・企業のブランド価値の向上
 ー企業のビジョンはイメージや文化とともに、企業ブランドの構築に役立つ。

第7章: 社会文化的変化の創出

・成熟に向かっている市場では、差別化だけでは不十分(やがてコモディティ化する)なので、変化を生み出す必要がある。

・成熟市場の企業は、下記2つの要因のために変化を生み出す解決策を探さざるをえない
 ー未来の成長の必要性 
 ー協力な差別化の必要性

・未来の成長の必要性 
 ーザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーは子供にアクセスできる強みを生かして消費者製品の販売(消費者の健康問題、とりわけ肥満)も行っている。数社のパートナーと恊働して子供たちの食生活を変えようとしている。

・強力な差別化の必要性 
 ーウォルマートの脅威にさらされているスーパーマーケットは、立地だけによる差別化ではない方法で努力しており(近年はウォルマートも市街地に出店しているため、機能しなくなってきている)、その中で消費者のライフスタイルを変化させてきている。

・近年、ますます多くの企業が慈善活動を通じて社会的課題に取り組むようになってきている。
 ー売り上げの一部をチャリティやコーズ(大義)に寄付している。これは、自社の評判を高めるため、もしくは税額控除をうけるため。

・社会的課題に対する最も進んだ取り組み方は、コーズ・マーケティング。これは、企業がマーケティング活動を通じて特定のコーズを支援するというもの。
 ーコーズマーケティングでは、企業はコーズに取り組むために資金だけでなくエネルギーも注ぐ。また、そのコーズを自社の製品に結びつける。
 ーハーゲンダッツは、「ミツバチを救おう」プログラムでミツバチの巣を守ると同時に、ミツバチを特にアイスクリームづくりのための重要な食材供給源と位置づけることを目指している。

・慈善活動やコーズ・マーケティングは、近年大きな支持を集めており、有効である。ただ、それらは戦略的に活用されていない。たいていの場合、PR戦略やマーケティング・コミュニケーション戦略の一環として使われているだけ。

・また、企業の慈善活動はある程度の消費者関与にはつながるかもしれないが、消費者のエンパワーメントや変化にはつながらない。それは、消費者のライフスタイルが変化しないから。
 ーエンパワーメントとは実現を可能にして、消費者がマズローの階段をのぼって、より高次の欲求を実現することができるようにすること。変化が必要。

・マーケティング3.0では社会的課題への取り組みを単なるPR手段とか、自社の活動が生み出す負の副産物に対する批判を拡散させる方法とみなしていない。
 ー企業は、よき企業市民として行動し、自社のビジネスモデルの根幹のところで社会的問題に取り組む必要がある。
 ーまた、消費者はマズローのピラミッドの階層を上がれるような力を与えられるべき人間とみなされる。

・社会文化的変化を生み出すには、三段階のプロセスが必要。
 ー社会文化的問題を特定する
 ーターゲット構成集団を選ぶ
 ー変化を生み出す解決策を提供する

・社会文化的問題を特定する: 企業は3つの基準に基づいて取り組む課題を選ぶ必要がある
 ー「自社のビジョン、ミッション、価値との関連性」、「ビジネス上のインパクト」、「社会的インパクト」
 ー健康やプライバシーなどが大きな課題になっている。

.ターゲット構成集団を選ぶ
 ー重大なインパクトを与えるためには、社会全体の中で大きな影響力を持っている構成集団を選ぶ必要がある。
 ー構成集団には、「性別や年齢によるグループ」、「中流階級」、「マイノリティグループ(宗教信者など)」という3つのタイプがある

・変化を生み出す解決策を提供する
 ー企業に期待される「雇用の創出」、「画期的なイノベーションの実現」、「社会的課題に解決策を提供する製品やサービスの開発」によって解決策を提供する。
 ーこれらは、企業が単独で提供することを期待されているわけではなく、他の企業やステークホルダーと恊働することが期待されている。

第8章: 新興市場における起業家の創造

・人類最大の課題である貧困を解決するには、富の構造をピラミッド型からダイヤモンド型に変える必要がある。
・貧困国を救うには、対外援助だけではなく、投資と企業精神の新興でなければならない(ピラミッドの中間層に上がれるように力を与えなければならない)
 ーまた、これはNPOや政府ではなく、経済発展の大部分を生み出していて、事業のネットワークをゆうしている企業によって解決される必要がある。

・この解決は、下記3つの力によって可能となる
 ー貧しい人々のITC(情報通信技術)インフラへのアクセスが可能となること
 ー超過供給と成熟市場の過小消費、それにピラミッドの頂点および中間層の市場におけるハイパー競争という3点。これは、企業に他の成長市場を探す動きを活発化させる。
 ー過密状態の都市部への移住を抑制する政府の政策。都市の成長は都市インフラに大きな圧力をかける一方で、農村部への投資は農村の人々の生活を向上させ、移住の流れを弱める働きをする。

・この3つの力によって、貧困を解決するには、新興市場もしくは既存市場のローエンドに投資することで実現できる。
 ー「下向きの大躍進」と呼ばれる動き。
 ー不均衡な経済成長によって生じた社会的課題を解決するために破壊的イノベーションが必要とされているところに投資するということ。

・この破壊的イノベーションが本当に貧困を解決するには、下記4つの条件が満たされている必要がある。
 ー1: 貧困の中にいる何十億人もの人に影響を与えるほど規模が巨大であること
 ー2: 何世代も続く永続的な解決策であること
 ー3: 本当に効果的で変化をもたらす解決策であること
 ー4: 上記3つすべてが効果的に実現されること

・この例として、バングラデシュのグラミン・ダノン・フーズの例。ミッションは、「カップ一杯のヨーグルトで世界を救う」。
 ー1: 全国的なプロジェクトなので規模が巨大
 ー2: 雇用の創出というインパクト(影響)をもたらすので何世代も続く解決策
 ー3: 生活水準を向上させるので明らかに効果的
 ー4: コミュニティを関与させるので効果的

・ソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)は、自社をとりまく社会にインパクトを与えながら同時に利益をあげている企業をさす。企業がSBEかどうかを決定する最も基本的な要素は、社会的目的が企業の最も重要な事業目的とされていて、その企業の意思決定に明確に反映されているかどうか。
 ーこのSBEが最も大きな希望を与えてくれるのは、ピラミッドの最底辺から生み出されるとき。

・SBEの成功は、下記3つの基準で測定できる。
 ー可処分所得の実質的価値を高める
 ー可処分所得の使用範囲を拡大する
 ー可処分所得の金額を増大させる

・可処分所得の実質的価値を高める
 ーユニリーバの手頃な価格のヨード添加塩、アンナプルナの例。ヨード欠乏症にかかっていたアフリカの5歳未満の子供に提供した。

・可処分所得の仕様範囲を拡大する
 ーデジタル・デバイド(情報量の差から生じる経済格差)に対処するために余分な機能を省いたハイテク製品を開発することは、使用範囲拡大のいい例。
 ー貧しい人々にPCを提供するXOやノバ・ネットPCの例。

・可処分所得の金額を増大させる
 ーグラミン・フォンの例。
 ーヒンドゥスタン・リーバの「プロジェクト・シャクティ」の例。何千人もの貧しい女性をセールス部隊として雇用し、自社製品を農村部の消費者に届けるとともに、彼女たちにかなりの額の可処分所得を提供している。

・SBEを成功させるにはいくつかの行動指針が必要
 ー市場の啓蒙: 製品の便益や消費者の生活の質を高める方法について説明する必要がある。
 ー地元コミュニティや情報リーダとのつながり: 低所得セグメントと取引する際には、文化的障壁や抵抗を取り除くことが重要
 ー政府やNGOとのパートナーシップ: 企業の目的を政府のミッションと結びつけることは、市場の啓蒙や全般的なプロモーション活動のコストを引き下げるのに役立つ。

・貧困緩和のためのマーケティング
 ーセグメンテーション: ピラミッドの最底辺
 ーターゲティング: 大量販売が見込めるコミュニティ
 ーポジショニング: 社会的企業
 ー差別化: 社会的起業家精神
 ーマーケティング・ミックス
  ー製品: 低所得者の顧客にとって現在は入手できない製品 
  ー価格: 手頃な価格
  ープロモーション: クチコミ
  ー流通: コミュニティ流通
 ー販売: 社会的起業家の販売部隊
 ーブランド: アイコン的地位
 ーサービス: 余分なサービスなし
 ープロセス: 低コスト

第9章: 環境の持続可能性に対する取り組み

・変化を生み出すもう一つの方法は、環境の持続可能性に取り組むこと。

・環境に対する大きな影響を生み出した例
 ーイノベーター
 ー投資家
 ー普及車

・イノベーターの例(デュポンの例)
 ー化学企業で、アメリカ最悪の汚染企業だったが、今では最もグリーンな企業のひとつになっている
 ー環境の持続可能性を自社の業務遂行上の義務ととらえて、ビジネスモデルに組み込もうとしている
 ー環境に優しい製品を生み出すというミッションが社内にしっかり根付いている。
 ーそのため、より環境にやさしい製品を生み出す技術を絶えず探し求めている(=イノベーター)

・投資家の例(ウォルマート)
 ー世界最大の小売企業
 ーかつては社会問題や環境問題に無関心な企業だった
 ーただ、2005年に環境問題に取り組むと宣言し、環境に優しいビジネスモデルに何億ドルも投資すると発表した
 ータグラインは、”いつも低価格”から、”お金を節約してよりよい暮らしをしよう”に変わった。
 ーこの変化でウォルマートの評判が改善した
 ーこのような投資家の場合は、製品のイノベーションに直接関わりはしないが、環境に配慮するプロジェクトに資金を出すことで大きな貢献をしている

・普及車の例(ティンバーランド
 ーあらゆるステークホルダーに最も尊敬されちえる企業のひとつ
 ー自身が環境に配慮しているだけでなく、世界中のコミュニティで環境についての意識をかきたててきた
 ー普及車は通常、化学、バイオテクノロジー、エネルギー、ハイテクといった産業以外で活動する、相対的に小さい企業。
 ー中核的な差別化要素は環境に配慮したビジネスモデル
 ー事業以外でのミッションは、ユーザグループ、社員、一般の人びとの間に環境意識を生み出すこと
 ー同社のウェブサイトに、この意識がはっきりあらわれている
 ーもう一つの戦略は、製品を通じて環境に関心を向けさせること。靴やブーツに添えている「栄養表示ラベル」の例

・イノベーター、投資家、普及車の恊働
 ー三者は環境保護のためにそれぞれ独自の役割を果たしている
 ーインパクトの相乗効果を生み出すには、3つのタイプのすべてが市場に存在していなければならない

・環境に配慮した製品・サービスの市場は、4つのセグメントに細分化できる
 ートレンドセッター(トレンドを決める人): 先駆者の市場
 ーバリューシーカー(価値を求めている人): 主流の市場
 ースタンダード・マッチャー(標準に合わせている人): 主流の市場
 ーコーシャス・バイヤー(身長な購入者): トレンドに乗り遅れる人

・トレンドセッター
 ーグリーン製品の導入段階において最も重要なセグメント
 ーXALSの分類によると、「革新者」のセグメント
 ー活発な消費者で、新しいアイデアや技術を最も積極的に受け入れる
 ーただし、ここでとどまっていてはグリーン製品は成長段階に入らない

・バリュー・シーカーとスタンダードマッチャー(主流の市場)
 ーより合理的に判断する
 ーグリーン製品だからといって割増価格を払おうとしない
 ーすなわち、このセグメントをターゲットにするときは、グリーン背品は手頃な価格でなければならない
 ーバリュー・シーカーはXALSにおいて「シンカー(考える人)」に分類され、新しいアイデアを検討することにやぶさかではない。望ましくない決定を破棄して、より確実な決定に切り替えることが容易にできるタイプの顧客。ただ、保守的な実利的な消費者でもあるので、グリーン・マーケターは自社の製品がより小さい環境インパクトでより大きな価値を提供できるという点を強く売ったる必要がある。
 ースタンダード・マッチャーは、業界標準になっていない製品を購入しない。人気のある製品だどいうことが、最も重要な購入理由。ここのセグメントの関心をひくには、標準とみなされるためにクリティカル・マスに到達する必要がある。

・コーシャス・バイヤー
 ーきわめて会議的で、環境に配慮したビジネスがすでに常識になっていてもグリーン製品を買わない顧客
 ーこのようなタイプの顧客に訴えかけてもコストがかかりすぎる

・9章のまとめ
 ー導入時期: エコ優位性を訴える / グリーンを差別化の主な源泉として使う / トレンドセッターからの推奨を求める / 成長段階に到達させるためにクチコミ・マーケティングを利用する
 ー成長時期: エコ効率を訴える / バリューシーカーをターゲットにすることで人気を広める / 規模の経済を使って、より求めやすい価格にする
 ー成熟時期: エコ効率を訴える / グリーンを打ち出す競争相手が増えるので、他の分野での差別化を強化する
 ー衰退時期: N/A

第10章: まとめ

・マーケティングと価値の関係には3つの発展段階がある
 ー第一の段階: マーケティングと価値が分離している。多くの人が、余計な価値があるとそれを守るために余計なコストや制約がかかるため、マーケティングを行うには崇高な価値など必要ないと考えている。
 ー第二の段階: 平衡状態と呼ばれる。企業は普通のやり方でマーケティングを行い、利益の一部を社会的コーズ(大義)のために寄付する。
 ー第三の段階: 企業は価値どおりに行動しようとし、これらの価値が企業にパーソナリティと目的を与える。マーケティングと価値の乖離は一切容認されない。

・マーケティングと価値を統合する原則は下記10の原則がある

・原則1: 顧客を哀史、競争相手を敬う
 ー顧客を愛するとは顧客に大きな価値を与え、彼らの感情や精神を感動させるということ。結果、ロイヤリティを勝ち取ることができる
 ー競争相手がいなかったら産業の成長のペースは遅くなるので、市場全体が拡大するのは競争相手のおかげ。競争相手を観察することで、企業は空いての強みと弱みだけでなく、自社の強みと弱みも知ることができる。
 ー競争を受け入れることによる市場成長線利益は、縦もしくは横の技術転移により実現できる

・原則2: 変化を敏感にとらえ、積極的な変化を
 ー時代が変化するときは、時代とともに変化しなければ時代遅れになってしまう
 ーウォルマートも変化している

・原則3: 評判を守り、何者であるかを明確に
 ーマーケティングとは、ブランドの評判がすべてなので自社のブランドのポジショニングと差別化を標的市場に対して明確に示さなければならない
 ー同じ製品であれば、顧客は評判の高い方を選ぶ

・原則4: 製品から最も便益を得られる顧客を狙う
 ーセグメンテーションの原則
 ー最も購入する可能性が高く、便益を得られる人に確実に訴えかける
 ーほとんどの市場は下記の4つのセグメントで構成されている
  ーグローバル・セグメント: グローバルな製品や機能を求め、そのためには喜んで割増価格を払う人
  ー「グローカル」セグメント: 品質はグローバルだが機能はローカルな製品を、若干安い価格で手にいれたいと思う人
  ーローカル・セグメント: ローカルな機能のローカルな製品を、ローカル価格で手にいれたいと思う人
  ーピラミッドの底辺セグメント: 入手できる最も安価な製品しか買うことができない人

・原則5: 手頃なパッケージの製品を構成価格で提供する
 ー価格と製品がつりあっていなければならない

・原則6: 自社製品をいつでも入手できるように
 ー自社製品を求めている顧客が、それをなかなか見つけられないことがあってはならない
 ーデジタル・デバイド(デジタル技術やインターネットへのアクセスを持つ者と持たざる者の社会文化的格差)はあるので、この格差を埋められる企業が、顧客基盤を拡大することになる

・原則7: 顧客を獲得し、つなぎとめ、成長させる
 ー顧客と獲得したら彼らと良好な関係を構築し、ニーズ・ウォンツ、嗜好や行動を把握できるよう、顧客と個人的に知り合いになる
 ーこれは顧客マネジメント(CRM)の原則

・原則8: 事業はすべて「サービス業」である
 ーどのような事業であっても、顧客に奉仕したいという気持ちを持たなければならない

・原則9: QCDのビジネス・プロセス改善を
 ー品質、コスト、納期のビジネス・プロセスを常に改善する

・原則10: 情報を集め、知恵をしぼって最終決定を
 ー常に学び続ける必要性がある



以上、「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」まとめでした!

「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」まとめ(前半)

そもそも

もうずいぶん前(3, 4年前?)に読んだ「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」を再度読んでみたので、そのまとめ。

Amazon CAPTCHA


・いろんなところで「マーケティングが・・・」とか言うけど、「そもそもマーケティングって何?4P?製品を広告すること?売ること?営業と何が違うんだっけ?」に答えられない
・「ビジネスモデルキャンバスでチャネルっていうけど、そこって”流通 / ユーザに価値を届けるもの”くらいの認識でしかないけど、理解足りなくね?」と思った。
・(あとは内容を大分忘れてしまった / 何となく時間が空いたので・・・)

というモチベーションで再度読んでみました。
この本多少古いとはいえ、マーケティングの普遍的なところも体系的にまとめられているので、今でも十分読む価値はあるかと。

分量がめちゃ多いので、全後半の2回に分けようと思います。今回は、その前半。10章あるうちの5章までをまとめてあります。また、僕の琴線にふれた部分もピックアップしているので、この本の純粋なまとめとは少しズレてるかもです。

この記事は前半(1〜5章)をまとめたもので、後半はこちらにまとめています。mame0112.hatenablog.com

第1章: マーケティング3.0へようこそ

・顧客は、製品に性能だけでなく、精神の充足をも求めるようになってきているので、マーケティング3.0が必要となる。

・この章の要約
 ーマーケティング3.0は、マーケティングのやり方が消費者の行動変化によって大きく帰られる段階。消費者がより恊働的、文化的、精神的なマーケティング手法を求める。

・マーケティングの比較
 ーマーケティング1.0: 製品中心のマーケティング。製品を販売することを目的とする。
 ーマーケティング2.0: 消費者志向のマーケティング。消費者を満足させ、つなぎとめることを目的とする。
 ーマーケティング3.0: 価値主導のマーケティング。世界をよりよい場所にすることを目的とする。

・マーケティングを3.0に向かわせたのは、テクノロジーとグローバル化、創造的社会の登場

・テクノロジーの進歩により、SNSなどを使いユーザ自身が情報を発信することが可能となった(SNSの例)
 ー口コミが力を持つ。
 ー表現型ソーシャル・メディア(ブログやTwitter)と恊働型ソーシャル・メディアがある(オープンソースWikipedia)

グローバル化
 ーグローバルなバリューチェーンによりモノの交換が容易になった。
 ーただ、テクノロジーとは異なり、グローバル化はそれに対抗する力を誘発する(すべての国に平等な土俵を容易するが、同時に脅威になるため)

・創造的社会の登場
 ー科学、芸術、専門サービスで働く社会は、社会発展の最も進んだ姿。
 ーマズローのピラミッドを登っているので、人間の最も重要な欲求が生存欲求から精神的欲求に変わりつつある。なので、”価値(=自分たちの精神を感動させる経験やビジネスモデル)”が需要。
 ーこの価値をビジネスモデルに組み込むには、精神性の階段を登って行けること、そして精神的欲求を企業のミッションやビジョンや価値に組み込めること。

第2章: マーケティング3.0の将来モデル

・この章のまとめ
 ーマーケティングの最終形態では、アイデンティティ、インテグリティ、イメージの3つがうまくバランスのとれたものになる。
 ーマーケティング3.0は、企業のミッションやビジョン、価値に組み込まれた意味をマーケティングすることでもある。こう定義することで、マーケティングの地位をさらに高め、企業の戦略的未来像を描く際のじゅうようなプレーヤーになる。なので、マーケティングは単なる販売やツールを使った需要の送出ではない。

・ニール・ボーデンが1950年代にマーケティング・ミックスという言葉を生み出した
・ジェロームマッカーシーが1960年代に4Pという枠組みを打ち出した。
・ただ、この時期は、マーケティングの最も重要な目的は、製品に対する需要を生み出すこと。4Pは当時の製品管理の製品の開発、価格の決定、プロモーション、流通先のみを言い表したもの。
・ただ、近年では経済成長により4Pだけでは厳しくなってきている。
・マーケティングが、より顧客に注目したものに変わるにつれ、戦術的なものから戦略的なものへ変化した。
・マーケティング1.0、2.0も引き続き意味を持つが、景気後退、ソーシャルメディアの登場、消費者のエンパワーメント、技術革新、グローバル化により、マーケティングの概念に巨大な変化をもたらす。
・未来のマーケティング活動の基盤になる3つの事柄
 ー共創: C・K・プラハラードが作り出した言葉。イノベーションに対するあたらし取り組み方を表すもの。製品にとって最大の価値を生み出すのは、個々の消費者の経験の集積である、という考え方。個々の消費者は、製品を経験するときその経験を自分独自のニーズや欲求にしたがって カスタム化する。
 ー3つのプロセスから成る。プラットフォームとなるカスタム化できる製品を世の中にだすこと、各自のニーズに合うように、製品をカスタマイズしてもらう、そして消費者からフィードバックをもらい、消費者のネットワークが行ったカスタム化を取り込むことによって、プラットフォームをより価値の高いものにする。
 ーコミュニティ化: 消費者同士を結びつける役割。プール型とウェブ型とハブ型がある。
 ーキャラクターの構築: ブランドが人間とつながるには、真の差別化の核をなす本物のDNAを築く必要がある。消費者に本物と認めてもらえるように、自分の主張に背かない経験価値を提供することを一環する必要がある。
・人間の基本的な構成要素は、肉体、独自の志向や分析を行えるマインド、感情を感じることができるハート、そして製品(魂などの源、すなわちその人がその人であることの核)の4つ。マーケターは消費者のハートに訴えなければならない(スターバックスの例)
・マーケティング3.0は、ブランドとポジショニングと差別化のバランスのとれた三角形として定義される必要がある。
 ーこれを完全なものにするのが「3i」コンセプト。Brand identity, Brand integrity, Brand imageの3つ。
 ーソーシャルメディアでは、ブランドはコミュニティの一員のようなもの。
・ミッション、ビジョン、価値
 ーミッションは事業内容と言われることもあるが、ダイナミックなビジネス環境では事業の定義は変わるので、「その企業の存在理由」と定義する。ドラッガーも出発するのがよいかもしれない、と述べた。
 ービジョンは企業の望ましい未来像を書き出したものと定義することができる。どのような企業になり、何を達成したいか?を述べたもの。
 ー価値は、「企業としての行動規範」。価値は企業の車輪と言える。
 ーこのミッション、ビジョン、価値と価値を基準にしたマトリクスを「価値ベースのマトリクス(VBMモデル)」という。

第3章: 消費者に対するミッションのマーケティング

コカ・コーラやイケアなどはアメリカの人々に愛されるブランドだった。なので、その期待を裏切る製品や行動(二ユーコークの販売、イケアの公式フォントをデザイン性の高いものから機能的なものへ変更)をすると、消費者の反発をかう。
・優れたミッションの3つの特性
 ー想像: 普通できないビジネス
 ー普及: 人々を感動させるストーリー。Appleの1884年のCM。
 ー実現: 消費者エンパワーメント。そのミッションは消費者のものであり、その実現は消費者の肩にかかっていることを伝えるため。

第4章: 社員に対する価値のマーケティング

・自社の価値に背いた企業は、消費者からも社員からも叩かれる。
・社員の中に自社の価値を知らないものがいたり、PRのためだけと思っているものがいるのであれば、企業がマーケティング3.0を実現しているとはいえない。社員にも真摯に受け止めさせる必要がある(ただし、社員は消費者に対してよりも、さらに難しい)
・企業の価値
 ー参加承認欲求: 社員が身につけているべき基本的な行動規範。プロ意識や誠実さ。
 ー願望的欲求: 経営陣が根付かせたいと思っているもの。社員がまだ持っていないので、基本的な企業文化を形成することはできない
 ー偶発的欲求: 社員の共通のパーソナリティ特性の結果、得られるもの。異なるパーソナリティを持つ社員を排除することができるので、コアバリューにならない。
 ー中核的欲求: コアバリュー。
・企業文化を築くとは、共通価値と共通の行動を一致させるということ。つまり、組織内での日常の行動を通じて価値を示すということ。社員の価値と行動は、その会社のブランド・ミッションを反映していなければならない。
・恊働的価値を持つ企業では、社員が変化を起こすために他の社員や社外のネットワークと恊働することを奨励する(シスコ・システムズでは意思決定の権限は世界中の500人の幹部に分散されている)
・文化的価値を持つ企業では、社員が人々の生活に文化的な変化を起こそうという気持ちを抱かせる(食品を味わう、家族観を変える)
・創造的価値を持つ企業では、社員に自分の革新的なアイデアを育てて、それを他の人と共有するチャンスを与えるということ(3MやIDEOではイノベーションを重視している。勤務時間に自分のプロジェクトのために時間を使うことができ、会社に出資を求めることができる)

・優れたコアバリューを持つと、人材獲得競争で優位に立つことができる。優秀な人材を引き寄せる。

・社員は下記6つのセグメントに分類することができ、自社に合う人/合わない人を見極めることができる。また、この分類はマッキンゼーが生み出した社員セグメント化の枠組みと似ている。
 ー楽をして稼ぎたがるセグメント(手軽な成功を求める)
 ー柔軟な脇役のセグメント(仕事を優先事項とはみなしていないため、流れに身を任せる)
 ーリスクと報酬を求めるセグメント(仕事を挑戦の機会とみなし、自らを奮い立たせる)
 ー個人の専門技能を生かしてチームとして成功したいと考えるセグメント(チームワークとコラボレーションを与えてくれる仕事を求める)
 ー確実な前進を目指すセグメント(前途有望なキャリアパスを求める)
 ー目に見える足跡を残したがるセグメント(会社に永続的な影響を与える機会を求める)

第5章: チャネル・パートナーに対する価値のマーケティング

・マーケティング3.0では、チャネル・パートナーを複雑な経済主体とみなしている。企業と消費者と従業員が混じり合っているような存在。
・チャネル・パートナーには、自社と全く同じ目的・アイデンティティ・価値を持つパートナーを選ぶ必要がある。
・企業とチャネル・パートナーの協力関係に公平さという価値が存在する場合は、チャネル構造全体で価格の安定を調整するのが容易になり、したがってチャネル全体の経済性を高めることができる。
・自社が消費者に対して関わりを持っていない場合は、チャネル・パートナーに、消費者とのインターフェースになってもらう。その際、チャネル・パートナーを通じてストーリーを広める。この場合、チャネル・パートナーはメーカーより重要な存在として認知される。
・創造的なチャネル・パートナーシップには4つの発展段階がある。
 ー第一段階: 販売活動のすべてを直販部隊や一つのチャネルに頼っているとき。
 ー第二段階: 第一段階から成長して、企業が売り上げや製品の入手しやすさを高めるために販売地域を拡大しようとすると、この段階になる。この段階では、製品やセグメントや地域によって業者やチャネルを使い分けることはしない。その結果、流通業者同士や他のチャネルとの間での販売活動のコンフリクトが起きる。
 ー第三段階: 第二段階のコンフリクトの問題を考慮して、自社の市場を地域、消費者セグメント、もしくは製品セグメントにより分割した段階。企業はコンフリクトを避けるために流通業者やダイレクト・チャネルの活動に明確な境界とルールを設ける。
 ー第四段階: 企業が使う様々なチャネル間で分業が行われる。この結果、一つのセグメント市場や地域市場にタイプの異なる複数のチャネルが共存することができ、それぞれが恊働する。企業がさまざまなチャネルに仕事を分担させる「統合型マルチチャネル」の段階。


6章から10章は後半として下記に記事にまとめました!mame0112.hatenablog.com

Javascriptでデザインパターン (その8: Decorator)

今回はDecoratorパターン。

8回目は、Decoratorパターン。compositeパターンとよく似て、中身と外側(今回は中身と装飾)を同一視することで、使う側が中身を意識する必要がなくなるメリットがあります。

そもそもDecoratorパターンは?

Wikipediaによれば、"このパターンは、既存のオブジェクトに新しい機能や振る舞いを動的に追加することを可能にする"とのこと。

僕の言葉でいえば、
・核となるオブジェクトがあってそれに微妙な変更を頻繁に/動的に加えたいときに使う
・(これはクラスベースの言語特有の説明かもですが)通常核となるオブジェクトがある場合は、継承(extend)することで機能拡張をするが、そのパターンが多いときは"継承の継承の継承・・・"というように、そのパターンがネズミ算的に増えてしまう。
・そこでDecoratorパターンでは、その"微妙な変更"を1つのクラスとして切り出して上記のようなパターンを減らすことを目的とするですかね。

サンプルコード

サンプルコードです。
何か実践に近い例はないかなぁ・・・と探した結果、Photoshopのような画像編集ソフトの例を思いつきました。
Photoshopのような編集ソフトは、効果として、元の画像に何回も/何種類もエフェクトを追加すると思います。そのエフェクトの管理は、このDecoratorパターンで実現できますね。

下記の例では、Contentという元々の画像に対して、"ColorVisualEffect", "AlphaVisualEffect"を加える例です。(本当はもっと多く書いてもいいのですが、コードが長くなってしまうので2つだけに絞っています)

まずは、核となる元画像(Content)を作ります。

// Component
var Content = function(){
};

Content.prototype = {
	show : function(){
		console.log("Original image");
	}
};

特に変わったところはないですね。show()は、画像を表示するメソッドです。

続いて、ColorVisualEffectを定義します。

var ColorVisualEffect = function(contentArg, paramArg){
	this.content = contentArg;
	this.param = paramArg;
};

ColorVisualEffect.prototype = {
	show : function(){
		this.content.show();
		console.log("Color value: " + this.param);
	}
};

ここでのキモは、"show()"のメソッドがContentと同じであること(中身とエフェクトを同一視している)、そしてContentをメンバ変数として持つことです。メンバ変数として持つ理由は、後ほど。

続いて、AlphaVisualEffect。これはColorVisualEffectとほぼ同じなので、特に説明はいらないかと思います。

var AlphaVisualEffect = function(contentArg, paramArg){
	this.content = contentArg;
	this.param = paramArg;
};

AlphaVisualEffect.prototype = {
	show : function(param){
		this.content.show();
		console.log("Alpha value: " + this.param);
	}
};

そして、これを実際に表示してみます。まずは、元画像のみ。

var result1 = new Content();
result1.show();

結果。

Original image

そりゃそうだ。

続いて、これにColorVisualEffectを追加します。
ここで、ColorVisualEffectのコンストラクタにContentを渡してメンバ変数に保持している部分が効果を発揮します。ColorVisualEffectのshow()が呼ばれると、Contentのshow()も呼ばれるようになっています。

var result2 = new ColorVisualEffect(new Content(), 50);
result2.show();

その結果。

Original image
Color value: 50

ちゃんと元画像と、ColorVisualEffectも適用されています(値の50というのは適当です)

最後に、ColorVisualEffectをかけつつ、AlphaVisualEffectもかけてみます。それぞれのコンストラクタに同じContentの型を渡しているおかげで、つなげてエフェクトを適用することが可能になっています。

var result3 = new AlphaVisualEffect(new ColorVisualEffect(new Content(), 50), 25);
result3.show();

結果。

Original image
Color value: 50
Alpha value: 25

ColorVisualEffectもAlhpaVisualEffectも適用されましたね。

このパターンは、もちろん同じインスタンスを2回作成すれば、同じエフェクトを2回適用することも可能です。

new AlphaVisualEffect(new AlphaVisualEffect(new Content(), 80), 45);

とやると、透明度を80%にした後に、さらに45%にする・・・という処理になります。

余談・・・

Photoshopでエフェクトを重ねがけしようとすると、”新しいインスタンスが作成されます”という感じの注意がなされますが、これって、おそらくDecoratorパターンを使って、新しいエフェクトのインスタンスを作ろうとしているんじゃないかと思っています。もちろん、Photoshopソースコードなんて見たことがないので推測ですが。

以上、Decoratorパターンでした!