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「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(下)

今回で最終回、「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」のまとめです。
上、中は下記のリンクです。

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(上) - まめージェント

「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(中) - まめージェント

今回は、8章〜10章、そして終章(まとめ)です。
読破するのに合計で10時間くらいかかってるかな・・・。
非常に時間がかかりましたが、このくらいの時間をかけてもいいくらい、内容ギッシリな本でした。
オススメです。

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第八章: 戦略策定プロセスのマネジメント

・多くの新事業で一番マネジメントすべきなのは、戦略よりも、戦略策定に用いられるプロセス。

・二種類の戦略
 ー意図的戦略プロセス: 意識的で分析的、市場成長率、市場分野の規模、顧客のニーズ、競合企業の強みと弱み、技術曲線などに関するデータの分析を基とする。必勝戦略が明らかな際に使われるべき戦略。
 ー創発的戦略プロセス: 組織の内部からわき上がって来るもので、従業員が日常的に下す決定の積み重ねであり、未来志向でも戦略的でもない、戦術的な業務上の決定。将来を予見することが難しい場合は、この創発的プロセス主導で戦略を策定することが望ましい。

・意識的戦略を用いて社内の活動を適切に組織化できるのは、次の3つの条件がそろっているとき
 ー1: 戦略は成功のために必要な全ての重要な詳細を網羅し、それに対処している / 戦略の実行責任者は経営陣の意図的戦略の重要な詳細を理解している
 ー2: 組織が集団行動をとるために、経営トップだけでなく、全従業員にとってそれぞれおかれた状況から考えて理にかなったものでなければならない
 ー3: 集団の意図は、外部からの政治的、技術的な力や市場動向尾などの予測しない影響を極力排除しつつ果たされなければならない

・戦略策定プロセスで資源配分が果たす役割
 ーアイデアや実行計画は、意図的 / 創発的のどちらも、資源配分プロセスというフィルタを通る。これは、どれに資源を与えるか / 与えないかを決定するプロセスのこと。
 ーこの資源配分プロセスは複雑で分散しており、組織のあらゆるレベルで常に機能している。また、企業の意図的戦略と連動しているべきもの。
 ー一つ一つの資源配分プロセスが、企業の現実の行動を形作る。そしてこれが再度意図的および創発的プロセスに投入される。
 ー資源配分プロセスは、組織の価値基準であり、中間管理職が取捨選択を行う。
 ー価値基準に大きな影響を与える要因は、2つあり、それぞれコスト構造と規模の「閾値」(大企業であれば大きなうまみを求めるため、閾値が高くなる)
 ー価値基準はその他、下層の従業員の優先事項に影響を与える。どの顧客や製品を優先すべきか、など。

・戦略策定プロセスを事業開発段階に合わせる
 ー過去に成功したすべての新事業の90%以上で、創業者が意図的に追求した戦略が、最終的に企業の成功を導いた戦略と異なっていた。
 ー成功するのは、当初の戦略に欠陥があることが判明した場合に備えて、再試行する資金を残しておくこと。
 ー一度うまくいくと判断できれば、戦略策定の流れを意図的に策定する段階にシフトしなければならない。

・破壊的成長の波が起こったときに、下記の2つの点で失敗する可能性がある
 ー正しい戦略が判明しないうちに、未熟な意図的戦略を強引に実行してしまい、資金を使い切る
 ー意図的な戦略プロセスは、破壊的成長事業をつづけざまに立ち上げる取り組みで障害となることが多い
  ー成功した企業の資源配分プロセスのフィルタは、成功に導いた戦略に連動するようになるため、既存事業を支える計画以外のものをすべてふるい落としてしまう
  ー意図的戦略プロセスが組織に組み込まれてしまうと、次に新事業を立ち上げるときに、創発的プロセスを再び用いることが難しくなる(創発的プロセスの中で、当初の戦略と異なる現象を、創発的戦略のヒントとしてとらえるのではなく、それをふるい落とそうとしてしまう)

・戦略策定プロセスにおける3つの重要なポイント
 ー1: 新成長事業の当初のコスト構造を注意深く管理すること。当初のコスト構造によって、優先順位付けや資源配分の決定を導く価値基準や判断基準が決まってしまうため。
 ー2: 事業計画では、「発見志向計画法」などの手段を通じて、重要な前提について検証するようにし、有効な戦略を生み出すプロセスを加速させる
 ー3: 1つひとつの事業に繰り返し関与し、創発的・意図的戦略策定プロセスのどちらに従うべきかを判断する。
 ー上記のように、新事業のコスト構造が資源配分決定に及ぼす影響力はとても大きいため、初めから理想顧客を魅力的と捉えるようなコスト構造を構築する必要がある。

・新事業が有効な戦略を見いだす間、創発的プロセスは、「未来志向計画法」という徹底手法を用いて試行錯誤を漠然と繰り返した場合よりも、有効な戦略を早く、目的をもって生み出す手助けができる。

・意図的戦略計画プロセスは4つの段階を経ることが多い
 ー第一段階: イノベーターが将来予測を行い、新事業がどのような形で成功するかを想定する
 ー第二段階: これらの仮説をもとに財務予測を立てる
 ー第三段階: この財務予測に基づく提案を上級役員が承認する
 ー第四段階: 新事業をまかされたチームが戦略を実行する

・また、この段階は第二段階から第一段階に戻ることが多い 
 ーイノベーターや中間管理職は、プロジェクトの資金を獲得するため、見栄えのいい数字を示す必要があるため。

・この意図的戦略計画は、持続的改良と意図的戦略の世界ではそこそこ成功するが、破壊的イノベーションという新世界で意思決定を行うために用いられた場合は、このせいで誤った決定がなされることがある。なので、破壊的イノベーションには、発見志向計画法を用いるべき。

・発見志向計画法の4つの段階
 ー第一段階; 目標とする財務成果を打ち出す。新事業に必要な資金を獲得できる数字を示すべきであることを誰でも知っているのであれば、数字の見栄えをよくするために一度立てた仮説を手直しする茶番がなくなる
 ー第二段階: どのような仮定の正しさが証明されれば、この目標が実現されるのか?第一段階で立てた数字が実現すると現実的に期待できるのは、どのような仮説が正しいことが実際に証明された場合か?を明確にする。ここには、いろいろな理論に関連する仮定を含める。ローエンド型破壊や新市場型破壊が可能かどうか?や標的顧客が仕事を片付けるために新製品を使うか?など。
 ー第三段階: 重要な仮説の妥当性を検証するために、学習計画を実行する。この第三/第四段階は意図的戦略と順番が逆になっている。それは、重要な仮定の妥当性、もしくは無効にするような情報を、陣族に、なるだけ費用をかけずに収集しなければならないため。
 ー第四段階: 戦略を実行するために投資を行う

第九章: 良い金があれば、悪い金もある

・企業経営者が新成長事業にどのような「種類」の資金を提供し、事業のマネージャーがどのような種類の資本を受け入れるかは、新成長事業立ち上げの初期段階における重要な選択。
 ーどのようなタイプの資金をどれくらい受け入れるかによって、資金提供者のどのような期待を満足させなければならないかが決まるため。また、この期待が新事業がどのような種類の市場やチャネルを標的とすることができるかに、大きな影響を及ぼす。

事業の生成期に最も適した資金は、「成長は気長に待つが、利益は気短に急かす」タイプの資金
 ー逆に、「成長は気短に急かすが、利益は気長に待つ」タイプの資金が投資されると、イノベーターに「死の行進」を運命付ける。
 ー成長を気長に待つ必要があるのは、これまで述べたように、無消費に対抗するため、破壊的イノベーションが上位市場に移行するまで待つため。
 ー利益を気短に急かす必要があるのは、顧客がその製品に魅力ある価格を喜んで支払うという仮定をできるだけ早く検証する必要が出てくるため。その結果、マネージャーは固定費を削減し、低い単価当たりコストで儲けの出るビジネスモデルを考えるようになる。また、早期に利益を実現していれば、会社の財政状態が悪化しても事業が縮小されることはない。

・不十分な成長から生じるデス・スパイラル
 ーStep 1: 企業が成功する: イノベーティブな製品が生み出されると、経営陣は創発的なプロセスを排除し、この機会を開拓することにすべての投資を集中させる。そのために、中核事業が成功している間は新成長事業を立ち上げることができない。その結果、競合企業よりも早く持続的向上の軌跡を昇るようになる(ハイエンドのビジネスの方がうまみがあるため)。そして、ローエンドのビジネスを失い始めても、ほとんど気づかない。
 ーStep 2: (投資家が将来の予想成長率を株価に織り込むため)企業は成長ギャップに直面する: 予想成長率が達成されても、株価の上昇率は市場平均どまりになる。その結果株価が大幅に下落、それに対して経営陣は中核事業の現実的な潜在成長率よりもずっと高い目標成長率を発表し、さらに大きな成長ギャップを生み出す。結果、経営陣の交代や企業の買収が行われる
 ーStep 3: 大きな成長ギャップに直面した企業では、資源配分プロセスの判断基準が変化する。つまり、急成長することで成長ギャップを埋めることができないプロジェクトは、どんなものでも戦略プロセスの資源配分ゲートを通過できない。この時点で新成長事業を生み出すプロセスから脱線してしまう。この段階で、破壊的イノベーションは「十分に早く大きくなれないから」という理由で計画案が却下される(新成長事業は無消費に対抗する必要があり、創発的戦略プロセスに従う必要があるため)ただ、破壊的事業は必ず急成長することはできないため、新成長事業のマネージャーは規模を統計的に実証できる市場、つまり確立した明白な大市場にイノベーションを押し込む戦略をとるようになる(消費に対抗する状態)
 ーStep 4: 経営陣は一時的に損失を容認する: 明白な巨大市場で消費に対抗するには、顧客により優れた製品を出さなければならないため、金がかかる戦略だということが明らかになる。上層部は長期的な利益のために大規模な損失を出す現実を受け入れるようになる。ただ、多額の費用をかければ、その分、その費用をまかなえる顧客や市場分野が限られるため、新事業の成長にとっては逆効果。結果、ターゲットとなるのが無消費ではなく、最も多くの顧客に到達できる、最も大きなチャネルだけが十分な収益を早くもたらせると考えるようになる。この時点で、成長を気短に急かすが利益は気長に待つ、悪い金になる。
 ーStep 5: 損失が増大し、縮小を促す: 売り上げが目標に遠く及ばない一方、支出は計画通り実行されるため、投資家が予測成長率が達成されないことを尻、株価が大きく下落する。株価対策のため、経営陣は中核事業の校長を維持するために必要な費用以外の支出をすべて凍結する。企業の資源、プロセス、価値基準は中核事業に会わせて調整されているため、これは業績改善の確実な常套手段。これを受けて株価は上昇するが、中核事業の潜在成長率が株価に織り込まれてしまうと、新しい経営陣は成長のために投資を行う必要を認識する。結果、状況はStep3に逆戻りする。これを何度も繰り返した結果、他社に買収されることになる。

・成長投資のジレンマをどう乗り越えるか
 ー成長投資のジレンマとは「企業資金が良い金なのは、堅調に成長を続けている間だけ」ということ。成長を続ける中核事業は、新成長事業を守ってくれる。中核事業は新成長事業が無消費と対抗する間、創発的プロセスに従う猶予を与える。
 ー成長が鈍化した企業が利益ある新成長事業を立ち上げる方法を何とか発見したとしても、新成長事業が成長の遅い企業の中に埋もれているのは評価できない、と言われる。そして新成長事業をスピンオフさせた結果、株主価値が明確になることもあるが、その後、またして低成長事業にとらわれてしまう。
 ー新成長事業への投資資本を無駄にしない唯一の方法は、それが良い金であるうちに使うこと。つまり、本業がまだ十分健全で、成長を気長に待てる状況で投資すること。
 ー株式非公開企業はこのような圧力にさらされないため、新成長事業構築にとって適切であることが多い

・潜在的失速点を知るためには、財務成果ではなくパターン認識を用いる
 ー財務動向は何年も前のプロセス改善や新製品開発新事業創出のために行われた投資の結果にすぎないので、今日の事業の健全性を計る尺度ではない。
 ーそのため、良い金が悪くなる前に投資方針を立ててしまう必要がある。それは下記3つの方針がある

・投資方針を立てるための3つの要素
 ー1: 新成長事業がまだ本業が健全なうちに(=成長を気長に待てるうちに)定期的に立ち上げること
 ー2: 企業が大規模になっても成長事業を立ち上げる決定が、成長を気長に待てる組織部門のなかで下されるよう、事業部門を分割し続ける。
 ー3: 新成長事業の損失は、極力、既存事業の利益で補填しないようにする。利益を気短に急かすこと、中核事業が傾き始めても有望な事業に必要な資金を確保するためには、利益を実現するに限る。

第十章: 新成長の創出における上級役員の役割

・企業が破壊的成長の新しい波を生み出すには、上級役員が次の3つの責務をこなさなくてはならない
 ー1: 短期的な課題で、破壊的事業と主流事業のインタフェースを直接監督し、企業の資源とプロセスのうち、どれを新事業に適用すべきか、すべきではないかを判断、決定する。
 ー2: やや長期的な責任で、利益ある成長事業を繰り返し巧みに立ち上げるための反復可能なプロセスを作り出すこと。
 ー3: 永久に続くもので、状況の変化を察知し、変化の兆候を見分ける方法を教えること

・経営陣間よの理論
 ー現実には、組織の最上層の役員は、様々な意思決定に立ち会うことができない。そのため、持続的イノベーションの状況では、上層部が関心を払わずともうまく機能する意思決定プロセスが成功のかぎとなる。
 ー上級役員が関与する必要があるのは、主流組織のプロセスや価値基準が組織内の重要な決定をするのに適していないとき。具体的には、破壊的イノベーションのとき。
 ー戦略と経営に関する理論をしっかりと学んだ上級役員は、重要な成長産業のマネージャーたちを指導する必要がある。

・経営幹部なら誰にでも破壊的成長を先導できるのか
 ー創業者に導かれた組織が、基本的には単一事業型の企業で、破壊的イノベーションに直面した当時はそれほど多角化していなかった。これは、創業者が破壊的機会の追求を優先して、既存のプロセスを覆す自身があることによる。

・成長事業を連続して立ち上げるための4つの重要な要素
 ー必要になる前に始める: 財務動向ではなく所定の方針に従って作動させる
 ー上級役員による監督: 頂点から指揮する自信と権限をもった、CEOもしくは上級役員がこの取り組みを先導する
 ー専門家チーム「始動者と形成者」全社レベルの小規模なグループを設置し、確実に資金を得て実行されるようにするための、反復可能で信頼できる確実なシステムを開発する
 ー部隊の訓練: 破壊的機会を発見して、権限のある者に報告することを、組織の全員に徹底して習得させる

終章: バトンタッチ (まとめ)

・1: 実績ある競合企業に魅力的に移るような顧客や市場をターゲットとする戦略は、間違っている。競合が狙わない/背を向けるような場所を狙う。非対称的なモチベーションを生み出せれば、競合他社があなたの勝利に手を貸してくれる

・2: すでに優れた製品を使っている顧客を標的にするのは間違っている。無消費に対抗する方法を見つけ出すこと。顧客が何も持たない状態だからこそ、費用をかけずにそこにリーチすることができる

・3: 無消費者がいない場合は、ローエンド型破壊戦略を検討する。これもダメであれば、投資してはならない

・4: 「顧客にせめて・・・してもらえたら」という発想は間違っている。顧客がすでに片付けようとしていることを、一層手軽に、安価にこなすのに役立つ方法を模索する。

・5: 製品計画やマーケティング計画が社内の組織区分に沿って切り取られた市場分野を標的とするのは間違っている。また、標的市場が容易に入手可能なデータ(製品タイプ、価格帯、人口学的分類など)に沿って分類されているのも間違い。顧客が片付けようとしている用事に即した方法で市場を分類する。(ミルクシェークの例。万能型のシェークが2つの仕事をこなしているが、シェークの特性を改良しそれぞれの仕事をうまくこなせるようにすると、強豪相手からシェアを奪える)

・6: 製品改良計画が競争基盤が不変であることを前提としているのであれば、それは間違い。過去に大きな利益をもたらしたタイプの改良がこの先も同じ利益を得ることを仮定しているのであれば、ローエンドに目を向ける。

・7: 破壊的製品やサービスが十分でない状態で、業界標準やそれに付随する外部委託や提携の話をするのは間違い。オープンスタンダードを時期尚早に追求したり、競争基盤が変化しても独自アーキテクチャを非公開にしたりすると、成功はおぼつかない。

・8: 新事業コア・コンピタンスに適合するから成功すると思ったら、下記の3つの質問をする。また、これあらの質問に対する答えから、適切な組織構造と運営主体を選ぶ。
 ー成功するための資源があるか?
 ープロセスなど、これまで培われてきた方法は、新事業を成功させるために必要なことを行うのに役立つか?
 ー社の価値基準は、時間、資金、人材をめぐって競争している他の実行計画よりも、この実行計画を必要なだけ優先させるか?

・9: 8番の3つの質問を新事業のチャンネルを構成する全存在に問う。自分の会社のことだけでなあく、チャネルに属する企業のプロセスや価値基準も影響を持っている。

・10: 新事業のマネージャを選ぶ際は、候補者を描写する属性や、これまで任された責任の大きさではなく、候補者が過去にどのような問題に取り組んできたかに焦点を絞る。そして、それと新事業が直面すると思われる問題と対比する。

・11: 新事業立ち上げ後数年感は、製品、顧客、用途における最良の戦略が見つかったと思わず、有効な戦略を早く見つけられるようにする。また、どんな戦略でもうまくいくという証拠がない限り、実行に待ったをかける。

・12: 利益を気短に急かす。新事業が利益を生むようになるまで時間がかかるのだとしたら、それは破壊的技術を実績ある市場に押し込もうとする計画。破壊的イノベーションの状況で何年も気長に損失を許容すれば、誤った戦略を長期間追求することになる。

・13: 成長を気長に待てるように、会社の成長を持続させる。破壊では、特に無消費に対抗する場合には、離陸するまでの助走路が長い。また、事業が急成長することを証明できない投資をしない、と経営陣に言われたら、それは破壊的技術を既存市場に押し込もうとしているサイン。

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以上、クレイトン・クリステンセン著「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」のまとめでした!