「ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問」のまとめ
「ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問」を読んだので、
その内容をまとめました。
Amazon.co.jp: ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問: 牧田 幸裕: 本
まとめとは言ってもめちゃ長いですが、要素は抽出できているかと。。。
この本、競争の戦略をざっくりと理解するのにはいい本でした。
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・そもそも事業戦略とは?
-現状分析により明らかになった問題点・課題を解決する解決法
→各事業の問題や課題は様々な形で存在し、その数には上限がない
→また、現状分析の代表例は、3CやSWOT。
いずれも市場環境、競合環境、自社環境を分析する。
・企業の取りうる戦略は、下記3つのいずれか
-コストリーダーシップ
→経験曲線とスケールメリットが必要。
ー差別化
→業界内の多くの買い手が重要だと認める特性を、
ひとつまたはそれ以上選び出して、このニーズを満たすには
当社以外ないという体制を作る必要がある。
→差別化を感じるべき主体は、顧客であり、企業ではない。
つまり、差別化を機能させるためには顧客に
有意差を感じさせる必要がある。
-(選択と)集中
→特定の買い手グループとか、製品の種類とか、
特定の地域市場とかへ、企業の資源を集中する戦略。
→この戦略が成功する条件は下記
→大企業にとって成長が穏やかで、市場規模がそれほど
大きくないこと
→市場参入企業が少なく、競争が穏やかである。
(これが明らかにならないようにこっそりビジネスを行う必要がある)
(つまり、集中選択は意図的に売上量を制限しようとするもの)
・コストリーダーシップを採用できる企業とは?
-業界シェア一位企業のみ。
→他の企業がやろうとすると、悲惨なことになる。
e.g. 牛丼業界の例
-もしくは相対マーケットシェアが低くても破壊的技術を保有することで
劇的にコストを下げる
・差別化を採用すべき企業とはどのような企業なのか?
-世の中の大部分の企業が該当する。
→ただし、ある特定顧客をターゲットにしないと差別化は機能しない
→現状では、市場は均質でなく、広大で多様な市場のすべての
顧客とつながることが不可能であるため。
(つまり、マス・マーケティングが使えない)
・差別化を採用した場合、市場全体をターゲット顧客にできるのか?
ーできない。
市場は多様性に富んでいるため、全体をターゲットにすることは不可。
・低価格戦略は差別化でないのか?
-差別化とは、単位当たりの価格を上げて、利益を出す戦略。
→つまり、高付加価値 = 高価格→高利益という構図。
-ただ、低価格戦略も差別化の1つ。
→そもそも差別化は業界1位から少しでもシェアを奪う戦略なので、
低価格戦略でもその目的を達成することはできる。
e.g. QBハウスの例
→エッジの効いた差別化は特定の人にしか受けない(評価されない)
・差別化と集中は何が違うのか?
ーターゲットに対する割り切りの差。
→差別化をする企業は、市場全体をターゲットにしたいが、
それだと差別化にならないため、泣く泣く特定市場をターゲットとしている。
→集中を選択する企業は、そもそも業界1位と競い合おうとしていない。
・アドバンテージマトリックス
-競争上の戦略変数の多さと、優位性構築の可能性の2軸で分類する。
ー規模型事業
→スケールが効く。
だから、大資本だと儲かりやすい。
-特化型事業
→スケールが効く。
ただ、差別化で勝負することもできる。
だから、大資本でも小資本でも設けるチャンスがある。
-分散型事業
→スケールが効かない
差別化できるかどうかで勝負が決まる。
だから、大資本はやりにくい。
小資本に儲けるチャンスがある。
-手詰まり型事業
→スケールが効かない。差別化もできない。
だから、誰も儲からない
・市場ライフサイクル上でのアドバンテージマトリックス
-市場誕生期/市場成長期初期
→分散型事業になりやすい
→差別化が機能する + 勝負軸がいまだ決まっていない
ー市場が成長すると、勝負軸がシンプルな場合は規模型事業へ、
勝負軸が複数ある場合は特化型事業へと変遷する。
ー手詰まり型事業は、業界構造として不健全。
→収益性の高い企業が存在しないから。
今の日本の多くの企業は、手詰まり型事業に足を踏み入れている。
→手詰まり型事業に陥る理由は下記2つ。
→製品/サービスに差別化が効かないコモディティ市場
→スケールメリットが効くはずだが、その覇権争いが熾烈
e.g. 牛丼業界の例
・覇権争いが起きる理由は?
ー業界1位の企業が、クープマン目標値の市場影響シェア(26.1%)
以上のシェアをとれていないため。
e,g, インクジェットプリンタ業界
-すぐに機能しなくなる競争軸は差別化でない。
→違う競争軸でビジネスをする必要がある。
うまくいっているのが、ハンバーガー業界。
→マクドナルドはコストリーダーシップ、
モスバーガーは差別化。
・日本の企業は儲かっていない
-売上至上主義であり、収益性軽視の経営であるため。
ーROA(総資産経常利益率)では日本企業トップが5.1%、米国トップが6.9%。
ーROE(自己資本利益率)では日本企業トップが6.9%、米国トップが16.4%。
・日本企業と経営者の思考パターン
ー市場成長期にある=高い家庭普及率が見込まれる市場に経営資源を投入する。
→その際、特定市場をターゲットとするのではなく
全体市場をターゲットとし、市場全体に対して製品を均質に
高効率で大量に生産する。
→売上があがる = 生産量が増大することにより、
スケールメリットが効き始め、収益性が次第に高まることを期待する。
-特定市場に対するニーズ対応でなく、全体市場に対するニーズ対応を考える
→基本パターンは、より高機能、より小さく軽く。
→全体市場に対するニーズ対応なので、誰ものニーズを満たそうとする。
そうすると機能を絞り込むのではなく、機能付加が競争の基本パターン。
ー各社が同じ戦略基本パターンを採るので、差が出ない。
→差が出ないまま進化するので、どの企業のモノもいいが、大した違いが出ない。
→その結果、各社が差を出せるのは価格だけになり、
熾烈な消耗戦を引き起こす
→その結果、手詰まり型事業になってしまう。
・上記が起こるのは、多くの経営者にとって特定市場を狙うということは、
売上最大化の機会を失うことに見えるため。
-顧客ニーズから乖離し、とりあえず自社の技術力を活用し
機能を付加すればそれで差別化ができたと勘違いしているため、
差別化が機能しない。
・差別化が機能するということはどういうことか?
ーその企業のマーケティングが機能するようになる、ということ。
では、マーケティングが機能するとは?
→コトラーの言うセグメンテーション/ターゲティング/ポジショニングが機能し、
製品戦略、価格戦略、チャネル戦略、プロモーション戦略が機能する、ということ。
・上記をうまく運ぶためには?(セグメンテーション/ターゲティング)
-競合企業が市場を広くとっていても、自社は特定顧客をターゲティングすること。
ーターゲット顧客に、当事者意識を持って、肌感覚を持って接すること。
→感情をどうかできるような当事者意識が必要。
・上記をうまく運ぶためには?(ポジショニング)
ーコトラーのマーケティング戦略立案プロセスは、
セグメンテーション、ターゲティングの後にポジショニングを行う。
・ポジショニングとは?(≒ブルーオーシャン戦略)
-突き抜けていること
→どのくらい突き抜けるべきかは、顧客のニーズと競合企業の提供価値で決定される。
→競合企業の提供価値と、自社の提供価値をシビアに評価し、
比較する視点が必要。
-捨てること
→上記で決めた突き抜ける提供価値に経営資源を集中するため、
その他の提供価値ではそれほど経営資源を投入しないことになる。
→その結果、捨てる提供価値を選択する意思決定が必要になる。
-唯一無二の存在になること
→突き抜ける提供価値があり、不要な提供価値を捨てることができれば、
その製品やサービスは、独自のポジションを確立できる。
その独自性を唯一無二の状態まで持っていくことができれば、
差別化は機能する。
(何故なら、そのような特徴をもった競合企業の製品やサービスは存在しないから)
-唯一無二の存在になることが、顧客に「有意差」として伝わること
→そして、その状態が顧客に有意差として伝わる必要がある。
→これはターゲット顧客への理解があって初めて機能する。
・どうやって顧客のことを理解するか?
ー数値からではなく顧客の「顔」を見ることが重要。
→はずれ値やばらつきを拾う。
→マスメディアが取り上げるのは、上記のはずれ値やばらつき。
ユニークだから取り上げる。流行りではない。
・どうすれば顧客に有意差を感じさせることができるか?
ー「良さ」ではなく、「違い」を感じさせる必要がある。
→これまでフォーカスグループインタビューを行ってきたが、
その場では「極端な違い」は評価が低いことが多い。
→フォーカスグループインタビューではだいたいすでに存在する
製品の延長戦上で、高品質低価格にしてほしいという答えがかえってくる。
→顧客自身が自分のニーズに気づいていないため。
→フォーカスグループインタビューの結果を真に受けるため、
各社が似たような製品を開発してしまう。
・上記の問題を解決するために、マトリックス分析を行う。
-「良いが違いはわからない」ではなく、
「良くて違いがある」「違いがあるがよくない」を目指す必要がある。
(つまり、違いはあるが賛否両論ある)
→「良いが違いはわからない」は、これまでの製品や事業の延長線上で、
争いが熾烈。
e.g. 初期のウォークマンの例
・どうすれば突き抜けることができて、有意差を実現できるのか?
ーブルーオーシャン戦略でいう「増やす」の部分。
ーブルーオーシャンの戦略キャンバスを使う。
→ブルーオーシャン戦略の本参照。
→今の企業は、どこも似たような戦略キャンバスになっている。
→ベストプラクティス分析/競合ベンチマークのため。
・ベストプラクティス分析とは?
-国内/海外の先進事例を分析し、差別化が機能しているケースや革新的なやり方を
導入しようという改革手法
・どうすれば今までにない競争軸で有意差を実現できるか?
ー今までにない競争軸の有意差は、顧客ニーズの把握だけでは実現できない。
→自社の製品やサービスに対する絶対的な自信と信念が必要。
→ポジショニングマップ上で、ユニークなポジションをとることができる。
(このときの2軸は、これまで「当たり前」と考えられていた軸と違いそう)
・いかにしてこれまでの競争軸を取り除くか?
-特定市場を狙えば、顧客ニーズが明らかになる。
顧客ニーズが明らかになれば、「取り除く」べき競争軸が明らかになる。
e.g. フェラーリの例。
→5.1サラウンドシステムを取り除いた。
フェラーリを購入する顧客は、きれいな音楽ではなく、エキゾーストノートを楽しむ。
・長く続く差別化とは?
-現在の日本の企業では、差別化が3ヶ月しか続かない。
もっと差別化を続けるには、機能での差別化ではなく、
バリューチェーンでの差別化をする必要がある。
→バリューチェーンとは、研究開発、生産、物流、マーケティング、販売といった
企業活動を構成要素に分解したもの
e.g. 元々Appの数で勝負していたスマートフォン業界の例。
NFCモバイリングでは、アフターサービスという軸で差別化している。
→競合他社の強みを逆手にとり、差別化を機能させることもできる。
→弱みは改善できるが、強みはそう簡単に変えられない。
e,g, プレミアムビール市場の例。
サントリーは既存のモルツを犠牲にしてプレミアムビール市場に攻勢をかけたが、
アサヒはスーパードライが主力のため、それを犠牲にしてまで
プレミアムビールに注力することができなかった。
→スーパードライが弱い製品であれば、アサヒはサントリーの差別化を模倣できた。
-上記のように競合分析をすることにより、企業活動のどの領域で差別化すべきかを
明らかにできる。
・何故ベストプラクティスを真似することは難しいのか?
-ハード(仕組み)だけ作って真似できたと勘違いしてしまい、
ソフト(仕組みを運用する現場のビジネスパーソンの質)や
共有する情報の質を真似できないから。
→ベストプラクティスを真似でき、機能させることができる企業は、ほぼないから。
ユニ・チャームの例
→ベストプラクティスの模倣が機能するようにするには、
成功体験の共有とは何なのか?をもっと深く考えないといけない。
→何をもって成功とするか?が重要
→この成功(ソフト)の部分はそう簡単に明らかにできるものではないため、
真似できる企業は限られる。
ー目線の高さを同じにすればソフトを真似することもできる。
→競合他社からヘッドハンティングで目線の高さを明らかにする。
→そこで、さらに真似されにくい差別化を考える必要がある。
→ビジネスモデル(バリューチェーン全体)の差別化
・どうすればビジネスモデルの差別化ができるのか?
-常識を覆すビジネスモデルで差別化の賞味期限を長くする
ーバリューネットワークでビジネスモデルの差別化をはかる
e.g. 仮面ライダーやスーパー戦隊の玩具と番組の例
→日曜の朝の番組で活躍した武器がその日、おもちゃ屋に並ぶ
・次から次へと差別化実現するためには、経営陣はどうすべきか?
-全会一致を絶対に求めない。
社内で異論が出たアイデアを採用するルールにする。
→全会一致のアイデアにしてしまうと、とがってないものが出来上がってしまう。
e.g. 日清の例、記憶に残る幕の内弁当はない例
・どうすれば差別化の失敗を許容/評価できるようになるか?
-連帯責任は言い換えれば無責任。
→これを個人責任へとシステムを変更する。
-経営陣が責任をとりたがらない理由
→1: 自分が賛同して失敗した場合、
ライバル派閥からいつどこで責められるか分からないから
→2: 様々な関与者がいるはずなのに、責任範囲が明確でないため、
失敗の原因をすべてかぶせられる可能性がある。
→3: 一度失敗するとそれで終わり。敗者復活戦が用意されていない。
なので、失敗のリスクは大きく、賛同するより文句を言った方が安全。
賛同できるのは、全会一致で誰も責任をとらない場合のみ。
-上記の解決方法は下記のとおり。
→失敗の原因を失敗原因追求会議で明らかにする。
e.g. 日清食品の解剖会議の例
→新製品リリースの際には、関与者全員の寄与度合い、影響度を
プロセスごとに測る仕組みを作る。
そこで客観的に判断し、責任のなすりつけ合いが起こらないようにする。
e.g. 日清食品のATRモデルの例
→失敗しただけの場合は責任を負い、降格事由とする。
しかし、失敗を社内で横展開し、今後の新製品の差別化へ寄与する場合は
加点事由とする。
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何か違うよー、などありましたらご指摘くださいませm(_ _)m