まめージェント

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「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(上)

コトラーのマーケティング3.0を読んだ前回(
「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則」まとめ(前半) - まめージェント
)に続き、今回は、クリステンセンの有名な"イノベーションのジレンマ"の続編、「イノベーションの解」を読んでみました。これも実は4,5年前に買った本で、そこから本棚で眠っていたんですが、これを機会に。

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めちゃ長い本で、めちゃ内容も重いので、この本は上・中・下の3回に分けてまとめたいと思います(1〜4章をまとめるだけでも結構な時間がかかっており・・・)

内容を見ると”そうだよね”と思える部分も多いのですが、それをここまで体系立ててまとめているのがこの本のすごいところなのかなぁ、と思ったり。もちろん、なるほどー、と思わせてくれる部分もたくさんあります。さすがクリステンセン。この本、社会人なりたての人というより、ある程度経験をして「イノベーションうまくいかないなー」だとか、「新しいアイデアを提案してもことごとく却下だよな・・・」なんて経験をしたことがある人が読んだ方が、ふむふむ、と読める気がしました。

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第一章: 成長という至上命題

・成長という至上命題から逃れられないのは、投資家の「企業の予測成長率を株式の現在価値に織り込む」という厄介な性向のせい
 ーつまり、たとえ中核事業が力強く成長していても、株主の予測より速いペースで成長しない限り、市場平均を上回るリスク調整後リターンを実現できない

・株価を動かすのは、成長の方向性ではなく、企業の収益やキャッシュフローの変化率における、予想外の変化である

・さらに投資家は、新規事業の成長までも織り込んでしまう

・経営者にとって最もで手強い問題は、一度でもこの試みに失敗すればその後成長を再び軌道に載せるのが難しい

・10の投資のうち、2つが完全な失敗におわり、6つが傷を負いながら何とか存続し、会社全体の成功を支えるのは2つ。
 ー事業創造のプロセスは知り得ないという思い込みがあるため、誰もブラックボックスをこじあけて、新規事業が生み出されるプロセスを研究しようとしない。

イノベーションのプロセスでは、中間管理職が重要な役割を果たしている。優れたアイデアとそうでないものを振り分け、上層部から資金を調達するために中間管理職は存在する。

・問題なのは、中間管理職が市場がはっきりしない新製品のコンセプトを後押しすることはないこと。
 ー上層部が承認しそうにないアイデアを推してしまうと、彼らの昇進に影響があるため。
 ーその結果、経営陣の承認を得るために加工されてパッケージされあtアイデアの集合は、底辺にあふれているアイデアの母集団と全く違うものになる。
 ーつまり、企業内でのアイデアの不足ではなく、既存顧客を一層満足させるための計画に作り替えられてしまうことに問題がある。

第二章: 最強の競合企業を打ち負かす方法

イノベーションにはその状況に応じて、2つの全くことなる区分がある
 ー持続的イノベーション: よりよい製品をつくることで競う状況では、ほぼ必ず既存企業が勝つ
 ー破壊的イノベーション: 新規顧客や魅力のない顧客群に安く売れる、シンプルで便利な製品を商品化することが課題である状況では、新規参入者や既存企業をまかす可能性が非常に高い

・破壊的イノベーションには3つの重要な要素がある
 ー1: どの市場にも顧客が利用または吸収できる改良のベースがある。改良エンジンの例。
 ー2: それぞれの市場において、イノベーションを起こす企業が新製品や改良製品の発売を通じて供給する改良のペースは、顧客が受け入れる最良のペースとは全く異なる奇跡をたどる。つまり、技術進歩の速度が、それぞれの市場階層の顧客の利用能力が向上するペースよりも速いことを示す。
 ー3: 持続的イノベーションと破壊的イノベーションの区別。持続的イノベーションは従来製品よりも優れた性能で、要求の厳しいハイエンドの顧客獲得を目指すもの。破壊的イノベーションは現在手に入る製品ほどには優れていない製品やサービスを出すことで、その奇跡を破壊し、定義し直す。

・大手企業には持続的イノベーションを支えるために設計された資源配分プロセスがあるため、構造的に破壊的イノベーションに対応できない。つねに上位市場に向かう一方で、破壊者にとって魅力的な新市場やローエンド市場を防御する意欲はない。これを、「非対称的モチベーション」と呼ぶ

・ある事業にとって破壊的イノベーションとなるアイデアが、別の事業にとっては持続的イノベーションであることがある
 ーその場合は、そのアイデアに投資してはならない。標的とする市場空間のすべての既存企業に対して、破壊的イノベーションとなる機会を定義しなくてはならない(持続的イノベーションでは、既存企業の方が勝つため、そのような企業に勝つ見込みのない喧嘩をふっかけていることになる)

・軌跡を上って収益性の高い市場の階層い続けざまに参入する一方で、収益性の低いローエンド製品を切り捨てて行くことは、利益率を高めて株価を堅調に保つために必要なこと。

・破壊的イノベーションのグラフ
 ー三次元で表現される。
 ー時間と性能が、顧客が製品やサービスお購入し利用する、特定の用途市場を定義する。これをイノベーションのジレンマでは「バリューネットワーク」と呼んだ。
 ーグラフのもう1つの軸は、消費と競争が行われる新しい環境を示している。新しいバリュー・ネットワーク。従来その製品を購入し利用するための金やスキルを持たなかった顧客か、または製品が利用される新しい環境かのどちらか。
 ー新しいバリューネットワークは、新製品が従来品よりシンプルで携帯性に優れ、製品コストが低いために実現する。
 ーこの、第三次元に新しいバリュー・ネットワークを生み出す破壊を、新市場型破壊と呼ぶ。
 ーこれに対して、ローエンド型破壊は、本来のバリュー・ネットワークのローエンドにいる、最も収益性が低い顧客を攻略するもの。

・新市場型破壊
 ー新市場型破壊者の課題は、打倒すべき相手が既存企業ではなく「無消費」である、新しいバリュー・ネットワークを生み出すことになる。
 ー性能が向上するにつれ、最も要求の甘い顧客から初めて、次々と新しいバリュー・ネットワークの中に引きずり込む。
 ーローエンドの顧客を引きずり出し始めると、大手企業は喜ぶ。自分たちの独誕生である上位市場に以降する際、一時的にだが、利ざやの薄い収益源を破壊者に明け渡す代わりに、持続的イノベーションで高い利益をあげるため。

・ローエンド型破壊
 ー実績のある企業から最も魅力の薄い顧客を摘み取ることで成長した、単なる低コストのビジネスモデル。

・アイデアを破壊的戦略として形成するための3つのリトマス試験紙
 ーアイデアに破壊的戦略としての可能性があるかどうかは下記の3つの質問で見極めることができる。
 ー質問の1つ目か2つ目に対する答えがYes(一般的には両方がYes)でなければならない

・質問1つ目: アイデアが新市場破壊の戦略に成りうるかを確認する
 ーこれまで金や道具、スキルがないという理由で、これを全く行わずにいたか、料金を払って高い技能を持つ専門家にやってもらわなければならなかった人が大勢いるか?
 ー顧客はこの製品やサービスを利用するために、不便な場所にあるセンターに行かなければならなかったか?

・質問2つ目: ローエンド型破壊の可能性を検討する
 ー市場のローエンドには、価格が低ければ、性能面で劣る(が十分いい)製品でも喜んで購入する顧客がいるか?
 ーこうしたローエンドの「過保護にされた」顧客を勝ち取るために必要な低価格でも、魅力的な利益を得られるようなビジネスモデルを構築することができるか?

・質問3つ目:
 ーこのイノベーションは、業界の大手企業すべてにとって破壊的か?もし一社もしくは複数の大手プレーヤーにとって持続的イノベーションである可能性があれば、その企業の賞賛が高く、新規参入者が勝つ見込みはほとんどない。

第三章: 顧客が求める製品とは

・既存の市場細分化がうまくいかない理由
 ー製品の種類、価格ライン、人口統計的属性や心理属性などにとって細分化する区分が、製品や顧客の「属性」によって定義されることにある。
 ー属性ベースの区分に基づく理論は、属性と結果の相関関係を明らかにすることはできるが、製品にどのような特徴や昨日を付加し、どのようにポジショニングすれば顧客に買わせることができるかどうかを示すのは、状況ベースの分類化(細分化)手法に基づくマーケティング理論である必要がある。
 ー顧客は、日々用事が発生し、それを製品を「雇う」ことにより解決をしようとする。
 ーつまり、顧客が製品を購入する状況を構成するのは、顧客が片付けなくてはならない用事の機能的・感情的・社会的な側面。(=顧客が片付けようとする用事や、その用事を通じて達成される成果が、状況ベースの市場区分を構成する)
 ーつまり、キーとなるのは、顧客自身ではなく、”顧客のおかれる状況”。
 ーミルクシェークの例(朝の退屈な通勤中の車内でで片手で飲める、腹持ちするドリンクが、夜は子供が飲み終わるのを待つ必要のある、イライラする飲み物に)

・状況ベースの区分を通じて、破壊の足がかりを得る
 ー顧客がどのような用事をなそうとしているかを注意深く観察することによって見抜き、彼らに問いかけることにより、仮説を立てる。

・破壊を持続させるためのイノベーション
 ー刺激的な成長が始まるのは、イノベーションが向上して、既存企業の製品にとってかわるとき。足がかりの獲得は、そのはじまりにすぎない。
 ー新市場型破壊における挑戦は、上位市場に向かう経路を作り出すこと。
 ーメーカーが特定の用事をよりうまくこなせるような特徴や機能に注力すればするほど、また、マーケティングメッセージをその特定の用事に長い間絞れば絞るほど、早く成長することができる。何故なら、競合企業からシェアを奪うだけでなく、同じ用事をするために雇われる、その他の製品やサービスからもシェアを獲得できるから。

・なぜ逆効果を招く方法で市場を細分化するのか
 ー上記のような内容はすでに繰り返し述べられてきており、経営者やマーケティング担当者も理解をしているものの、社内に働く次の4つの力により、正反対の方向へと進んでしまう
  ー1つ目: 的を絞ることへの恐れ
  ー2つ目: 定量分析の要求
  ー3つ目: 多くの小売りチャネルが属性に基づく構造を持っているため
  ー4つ目: 広告の経済学のよって、企業は製品のターゲットを状況ではなく顧客に定めるよう強いられる

・1つ目: 的を絞ることへの恐れ
 ー製品の焦点をはっきり絞ると、それ以外の用事を片付けようとしている顧客にとっての魅力が薄れる。
 ー益よりも害の方が定量化しやすい。

・2つ目: 上層部による機会の定量化の要求
 ーマネージャが担当組織の成果をはかるために、定量的なデータが必要なため。
 ーこの定量的なデータは、顧客がこなすべき用事ではなく市場規模によってまとめられてしまう。結果、用事という観点がなくなり、どの顧客も満足させられない製品を世の中に出すことになる。

・3つ目: チャネルの構造
 ー小売販路や流通経路は、顧客が片付けなくてはならない用事ではなく、製品区分ごとに組織化されていることが多い。そのため、イノベーターは片付ける必要のある用事に、柔軟に製品の的を絞ることができない。
 ーまた、小売や卸売チャネルは、自分たちにとって破壊的な製品、つまり自分たちの収益モデルを伸ばすのに訳に立たない製品は売ろうとしない。

・4つ目: 広告の経済学とブランド戦略
 ーマーケティング担当役員は、製品や顧客の属性によって市場を細分化することが多い。年齢、性別、ライフスタイルや製品の区分などの側面にそって切り取られていれば、コミュニケーション戦略を立てやすくなるため。
 ーミルクシェークを、顧客の状況に応じて異なったメッセージを伝えるのは非効率。
 ー解決策として、ブランド戦略によって顧客の状況にコミュニケートする。顧客はその状況になったら、そのブランドのことを思い出してくれる。
 ーコダックの使い捨てカメラの例。既存のカメラではなく、”ファンセーバー”として、イベントの楽しみを残せない状況と比較したので、製品が対象とする用途が明確になった。

・顧客はやりたくない用事には手を出さない
 ー人が生活の中でやり遂げたいと思うことは、基本的なレベルではそうそう変わらない。
 ーこの不変性がある限り、顧客にそれまで関心のなかった用事を優先することを求めるアイデアは、成功の見込みはほとんどない。顧客は、新製品が手に入るようになったからといって用事の方を変えることは絶対にない。逆に、顧客がすでに片付けようとしていた用事をより効率的に手軽にやり遂げるのに役立つ新製品なら、成功する。
 ーカメラの例。これまでやってこなかった赤目補正やアルバムでの整理をできる製品を発売しても、売れない。
 ーそれよりも、その場できちんととれているか確認するためにデジタルカメラを使い、焼き増しの手間を省くことができる。
 ークラム(ガリ勉)・ドットコムの例。

第四章: 自社製品にとって最高の顧客とは

・「無消費」の理由は大きく2つある
 ーそもそも関心がない場合(1990年代の米国でのPCの例。価格のせいで200ドルPCが流行らないのではなく、そもそも顧客がそのような用事を持っていなかった)
 ー用事を片付けたいが、市販製品が高すぎたり複雑すぎるため、自力で出来ずにいる場合。このタイプの無消費が、成長機会をもたらす。

・新市場型破壊のパターンを構成する4つの要素
 ー破壊的イノベーションにとって理想的な顧客や用途市場を探すためのテンプレートとして使える。
 ー1: 標的顧客はある用事を片付けようとしているが、金やスキルを持たないため、解決策を手にいれられずにいる
 ー2: このような顧客は、破壊的製品を全く持たない常置と比較する。そのため、本来のバリュー・ネットワークの中で、高いスキルを持つ人々に高い価値で販売されている製品ほぼ性能がなくても、喜んで購入する。こうした新市場顧客を喜ばせるための性能ハードルは、かなり低い
 ー3: 破壊を実現する技術のなかには、非常に高度なものもある。だが、破壊者はその技術を利用して、誰でも購入し利用できる、シンプルで便利な製品をつくる。製品が新たな成長を生み出すのは、「誰でも使える」からこそ。金やスキルをそれほど持たない人々でも消費を始める。
 ー4: 破壊的イノベーションは、全く新しいバリュー・ネットワークを生み出す。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場で利用することが多い。

・無消費への対抗が難しい理由
 ー無消費に対抗するのはわかりきったことのようだが、実績のある企業は、”ほぼ必ず”消費に対抗する道を選び、地位を確立した既存企業の既存製品に対抗し、無理矢理破壊的イノベーションを利用する。
 ーそれは、破壊的イノベーションの到来を察知すると、マネージャーがそれを脅威としてとらえ、既存顧客や既存ビジネスを守ろうとするため。

・コミットメントに加えて、柔軟性を手にいれる方法
 ー解決策は2段階に分かれる
 ー第一段階: 資源配分プロセスでは、イノベーションを脅威として位置づけることで、最高幹部からコミットメントを引き出す
 ー第二段階: このプロジェクトを機会としてとらえることができる、自立的な組織に責任を任せる

・新市場の顧客に到達するには、破壊的チャネルが必要なことが多い
 ーイノベーションを推進するときは、自分たちの製品を上位市場に進むための原動力としてとらえてくれるチャネルを探す必要がある。

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5章以降は、下記のページにまとまっています。

5〜7章
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(中) - まめージェント

8〜10章、終章
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」まとめ(下) - まめージェント